感謝(第150回)
波風先生にコラムを書いて欲しいと頼まれたのは、生活も仕事もよくわからず、不安に満ち溢れていた腹ペコが、相方さんの職場にはじめて顔を出したときのことだった。「わかりました」と返事をした一番の理由は、居場所を与えてもらえたことがうれしかったからだ。当時の腹ペコは、「自分は相方さんのおまけだ」と勝手にひねくれていた。今なら、「与えられた場所で与えられた役割を果たす」ことがどれほど大事で、それがどれだけ自分を成長させてくれるかわかるのだが、当時はそれがわからなかった。
こうして始まった週に一度の「自己点検」は、自分の未熟さをこれでもか、と浮き彫りにしてくれた。目の前にいる子どもたちに右往左往し、その実情を綴るというプロセスは、腹ペコの目を覚ますにはちょうどいいリハビリだった。そうでもしなければ、社会に必要とされるかどうかとか、そういうことが問題なのではなくて、「世間が腹ペコを育ててくれている」という事実が大切だという、そんな当たり前のことに気づけなかったかもしれない。
こんな器量の狭い人間のコラムを、週に1回居候させようと思ってくれた「信頼」が、この地でがんばっていく決意を支えてくれたひとつだったと思う。この場を離れても、「自己点検」を忘れずに、修行に励みたい。