波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

続 『言葉と戦車を見すえて』を読む。

2017年11月27日 | 読書
(前号から続く)
の時代が、今に続く生き方の地図と磁石を手にした最初だと思う。そして、これまでの人生はいつだって犬かきの連続で、いつも『こと』の後で地図と磁石を使いそれでもやっぱり迷いは解決できず、何とか生き延びてきた。この評論集を読み、もう仕事の緊張感からやっと抜け出たのだから、ここらで少し息を整え、もう少し伸び伸びと『近くて遠きもの・極楽』へ向かいたいと思った。必死なあがきで得た微かな成功体験を老人生活にまで引きずるわけにはいかない。古い地図と磁石を手にした時の初心を忘れたくないのだ。
 
いた言葉がある。 「『遠くて近きもの』を判じるために、私は私の実感や、想像力や、生活に即した感情を、一切信用しない。ただ新聞雑誌の記事を通じて、私の会ったことの無い人々が、見たことも無い場所で、何をしているかと言うことについて、いくらかの情報を得、その情報の検討から私に最も確からしいと思われる結論を描き出す。その結論の多くはこういうことがおこるだろう、という強いものでは無く、こういうことがおこり得る、という程度の弱いものである」(「遠くて近きもの・地獄」)。この文章の意味がつかめず、この論の最初から読み直したり、この文章の前後含めて何度か読み、今までの加藤の印象が少し変わった。政治と社会、知性と思想、現実理解の客観的・科学的な拠りどころだ。文化系で無く理科系(医学)の徒だったとしても、こういう証言はあまりに正直で少し特別な感じがした。一貫した信条の知識で無く、一貫した観察と分析の結果としての知識に。(次回に続く)


 
画像は、この文庫本の巻末解説者、成田龍一の著書『加藤周一を記憶する』(講談社現代新書)。文庫の解説がわかりやすいので発注した一冊。標題がマル、現代知識人についての解説をこんなふうに時々読むのは加藤周一だけだな。難しさついでに、カズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』も買ってしまった昨日は朝6時~夜11時間まで送迎・発表会・友人宅訪問・来客・祝賀会と忙しく、今日が日曜日みたいな気分でいたら… 
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