電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブルックナー「交響曲第5番」を聴く

2012年03月21日 06時03分40秒 | -オーケストラ
職場まで、毎日かなりの長距離マイカー通勤をしています。もうすっかり慣れた道ですが、雪が融け、黒いアスファルトの路面になると走りやすさが段違いで、うれしくなります。最近の通勤の音楽は、ブルックナーの「交響曲第5番」を選び、2種類の演奏をとっかえひっかえ聴いておりました。一つは、ロブロ・フォン・マタチッチ指揮チェコ・フィルハーモニーによるもの(DENON COCO-70415)、そしてもう一つは、飯森範親指揮山形交響楽団による原典版によるもので、SACDとCD のハイブリッド盤(YSO-Live,OVCX-00048)です。このときの演奏は実演で聴いており、すでに記事(*1)にしております。

マタチッチとチェコフィルの演奏は、大きなホールと四管編成のオーケストラのパワー(*2)を発揮し、じりじりと盛り上げて行って、豪快に爆発するタイプのもの。マタチッチが作り出す音楽も、ワーグナーのように聴衆の感情を扇動して一つの方向に連れていく力があります。車の中で思わずこぶしを握り、一緒に唸ってしまうようなタイプ(^o^)か。1970年11月、プラハの芸術家の家で収録された、スプラフォンによるアナログ録音です。

これに対して、飯森範親指揮する山形交響楽団の演奏は、オリジナルの楽譜どおりの二管編成で、あまり大きくないが音響の良いホールを生かし、透明な響きと音楽の推進力とを両立させようとしたものでしょう。そして、その成果は確実にあがっていると感じます。ホールを満たす弦楽の緻密さや盛り上がる場面でのティンパニの迫力、金管セクションの音色など、大オーケストラによるブルックナーを聴き慣れた耳に新鮮に響きます。こちらは、2009年1月、オクタヴィア・レコードが担当して山形テルサ・ホールにてデジタル収録されたもので、たいへん優秀な録音です。

ただし、実演の記憶もあるだけに、カーステレオで聴く音楽の限界も痛切に感じてしまいます。冬のスタッドレスタイヤで走る車内では、繊細な弦のピアニシモは聴き取れませんし、楽器間で受け渡される際の音色の変化などは、とても再現は困難なのだなと感じてしまいます。思わず要求水準が高くなってしまうからでしょうか。

ど田舎にある超静かな自宅のオーディオ装置で聴くときには、車内の音楽再生の不満も忘れて、思わず大音量で聴き惚れてしまい、家人のひんしゅくを買ってしまいます。オルガン奏者でもあったブルックナーがなぜオーケストラを必要としたのか。たぶん、例えば音色が微妙に変化しながらppからffまでクレッシェンドしていくあの効果を、パイプオルガンでは出せなかったのだろうなぁ、などと空想しています。責任のない、素人音楽愛好家ならではの楽しみです(^o^)/

■マタチッチ指揮チェコ・フィルハーモニー管
I=19'25" II=18'18" III=11'50" IV=20'30" total=70'03"
■飯森範親指揮山形交響楽団
I~21'43" II=15'50" III=13'52" IV=24'00" total=75'25"

(*1):山形交響楽団第194回定期演奏会を聴く~「電網郊外散歩道」2009年1月
(*2): Czeck Philharmonic Orchestra ~チェコフィル公式サイト によれば、16型の四管編成。
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