電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第270回定期演奏会でモーツァルト、シニガーリャ、ミロシュ・ボク、ドヴォルザークを聴く

2018年06月10日 21時04分03秒 | -オーケストラ
幸いにお天気が大きくくずれず、週末農業に精を出すことができた土曜日の夜、山形交響楽団第270回定期演奏会に出かけました。今回は、ラデク・バボラークさんの首席客演指揮者就任記念の演奏会で、祖国チェコの作曲家ミロシュ・ボクに依頼した山響委嘱作品の世界初演の機会でもあります。プログラムは、

  1. モーツァルト/歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」序曲 K.588
  2. モーツァルト/ホルン協奏曲 第1番 ニ長調 K.412
  3. レオーネ・シニガーリャ/ロマンス 作品3(ホルンと弦楽合奏のための)
  4. ミロシュ・ボク/交響的黙示録 ホ長調(山響委嘱新作 世界初演)
  5. ドヴォルザーク/交響曲 第7番 ニ短調 作品70
      指揮・ホルン:ラデク・バボラーク、山形交響楽団

というものです。シニガーリャとミロシュ・ボク作品は初めて聴きます。

山形テルサ・ホールに到着したのがちょうどロビーコンサートのタイミングで、トロンボーン三本にチューバが加わった四重奏で、J.S.バッハのト短調のフーガに出迎えてもらいました。いつも聴くオルガンの響きとは、似ている面もあるけれど少々異なる印象もあり、良いものに触れた!というラッキー感があります(^o^)/



指揮者のプレコンサートトークでは、近年は指揮者としての活躍が増えているバボラークさんが、山響と良い関係を築けていることに喜んでいるとのこと。コンサートマスターの髙橋和貴さんをドイツ語の通訳にしてインタビューした西濱事務局長は、今回の世界初演となる山響委嘱作の作曲者ミロシュ・ボクさんがこの会場においでになっていると紹介、一気に注目を集めます。

ステージ上の楽器配置は、弦楽が左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、ヴィオラ(6)、チェロ(6)、その後方にコントラバス(4)というもので、正面中央にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、最奥部にホルン(2)、トランペット(2)、その右手にバロック・ティンパニとなっています。

1曲め、モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」序曲。ほんとにウキウキ、そわそわといった風情の音楽が鳴り出します。安心感のある楽しさです。
2曲め、モーツァルトのホルン協奏曲第1番。たしか、小学校の鑑賞教材になっていたのではなかったか。モーツァルト最晩年の作品らしい(*1)けれど、実に楽しい音楽になっています。

第3曲め、イタリアの作曲家レオーネ・シニガーリャの「ロマンス」作品3〜ホルンと弦楽合奏のための。編成がぐっと縮小され、ホルンとヴァイオリン(2),ヴィオラ(2),チェロ(2),コントラバス(1)という形になります。もともとは独奏ホルンと弦楽四重奏のために作曲されたもの(*2)のようですが、さらに表現力を増したみたい。好きだなあ、こういう曲! またステキな音楽を知りました。嬉しいことです。

前半最後になる第4曲め、ミロシュ・ボクの「交響的黙示録」。楽器編成が増強され、弦楽5部(10-8-6-6-4)に、Picc(1),Fl(2),Ob(2),Cl(3),Fg(2),Hrn(4),Tp(3),Tb(3),Tuba,Timp.,Cymbal,SuspendCymbal,Triangle,Chime,Tam-Tam というものです。冒頭から、強烈な力強さとエネルギーを感じます。わーお、これはすごい音楽だ! まさしく本日のハイライトとなりました。
作曲者のミロシュ・ボクさんがステージ上に上がり、大感激の様子で指揮のバボラークさんやコンサートマスターの髙橋和貴さんはじめ山響の演奏者の皆さんに謝意を評します。この様子を見ていた私達も、思わず嬉しくなる光景でした。
「さくらんぼコンサート大阪公演」でも、バボラークさんの指揮でこの曲を演奏する予定になっているようです。関西方面の皆様、これは一聴の価値ありです。「ボク、知らない」などというオヤジギャグをかましている場合ではありません!

15分の休憩の後に、後半はドヴォルザークの交響曲第7番です。
楽器編成は、弦楽5部にFl(2),Ob(2),Cl(2),Fg(2),Hrn(4),Tp(2),Tb(3),Timp. というものです。ふつう、ドヴォルザークの交響曲後期3曲の中で、この第7番は一種の緊張感があるものですが、ミロシュ・ボクの熱に満ちた「交響的黙示録」を聴いた後では、むしろ穏やかな安心感のある音楽に聞こえてしまいます。もちろん、それは良い意味であって、音楽の流れに身を委ねていると、実に気持ちの良いものでした。

ラデク・バボラークさんの意欲に満ちたプログラムには、近年にない刺激がありました。今回も、山響会員で良かったと思わせる、実に良い演奏会でした。

(*1):モーツァルト「ホルン協奏曲第1番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2009年10月
(*2):このスタイルでバボラークさんが演奏しているものがYouTubeにありました。
RADEK BABORÁK


【追記】
作曲者がステージに上がったシーンを少しだけ追記しました。(2018/06/16)
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