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文春文庫で村田沙耶香著『コンビニ人間』を読みました。2016年、第155回芥川賞受賞作です。
本作は、「コンビニエンス・ストアは、音で満ちている」の文で始まります。売り場の音に反応して次の行動を決める経験豊かなコンビニ店員として、主人公の古倉恵子は働いています。恵子が子供の頃のエピソードや、ヒステリーの女の先生を静かにさせた行動、子供を静かにさせるために果物ナイフをちらと見るあたり、どうもいわゆる高機能自閉症、アスペルガー症候群のタイプのように思えます。彼女は、定型的な作業に自分を当てはめて行動するのが得意で、マニュアル重視のコンビニ店員として「生まれ変わって」いるのです。
恵子は、家族の中でも友人たちの中でも、ちょっと変わった子として扱われ、いつか「治って」「普通」の生活が送れるようになることを期待されていました。恵子が働くそのコンビニに現れたのが、(素人判断は危険ですが、)どうやら妄想が出ているらしい白羽君。いろいろあって、周囲の「普通」圧力に同調し、白羽君と同居生活を始めます。周囲は勝手に盛り上がり、白羽君は勝手に恵子を働かせようと就活サポート役を始めますが、恵子はふと入ったコンビニであまり慣れていない店員の仕事ぶりに不満を持ち、「コンビニの声」を聞く、というようなお話。正直に言って、芥川賞らしからぬ面白さ(*1)と感じました(^o^)/
○
ところで、「普通」という言葉に抵抗を感じるという点について、言葉の意味が複数あるということが原因なのではなかろうか。例えば「きれい」という言葉には(1)美しい(beautiful)という意味と(2)清潔な(clean)、あるいは(3)整然とした(orderly)というような意味があるように、「普通」という言葉にも、例えば次のような意味と使われ方の違いがあるようです。
ですから、日常性の面を話題にしているときに規範性の面から受け止められてしまうと、ズレというか誤解が生じてしまうのでしょう。
(*1):アクタガワ賞とナオキ賞〜「電網郊外散歩道」2012年2月
本作は、「コンビニエンス・ストアは、音で満ちている」の文で始まります。売り場の音に反応して次の行動を決める経験豊かなコンビニ店員として、主人公の古倉恵子は働いています。恵子が子供の頃のエピソードや、ヒステリーの女の先生を静かにさせた行動、子供を静かにさせるために果物ナイフをちらと見るあたり、どうもいわゆる高機能自閉症、アスペルガー症候群のタイプのように思えます。彼女は、定型的な作業に自分を当てはめて行動するのが得意で、マニュアル重視のコンビニ店員として「生まれ変わって」いるのです。
恵子は、家族の中でも友人たちの中でも、ちょっと変わった子として扱われ、いつか「治って」「普通」の生活が送れるようになることを期待されていました。恵子が働くそのコンビニに現れたのが、(素人判断は危険ですが、)どうやら妄想が出ているらしい白羽君。いろいろあって、周囲の「普通」圧力に同調し、白羽君と同居生活を始めます。周囲は勝手に盛り上がり、白羽君は勝手に恵子を働かせようと就活サポート役を始めますが、恵子はふと入ったコンビニであまり慣れていない店員の仕事ぶりに不満を持ち、「コンビニの声」を聞く、というようなお話。正直に言って、芥川賞らしからぬ面白さ(*1)と感じました(^o^)/
○
ところで、「普通」という言葉に抵抗を感じるという点について、言葉の意味が複数あるということが原因なのではなかろうか。例えば「きれい」という言葉には(1)美しい(beautiful)という意味と(2)清潔な(clean)、あるいは(3)整然とした(orderly)というような意味があるように、「普通」という言葉にも、例えば次のような意味と使われ方の違いがあるようです。
- 日常性の面 震災後の生活の中で普通の日常の価値を感じた
- 規範性の面 そんなに普通の服装をしろって押し付けないで!
ですから、日常性の面を話題にしているときに規範性の面から受け止められてしまうと、ズレというか誤解が生じてしまうのでしょう。
(*1):アクタガワ賞とナオキ賞〜「電網郊外散歩道」2012年2月
・普通-異質という軸と、善-悪という軸が有って、本来は無関係
・ところが、どうしても普通=善と言う数式が多くの人の中に出来てしまう(narkejpさんの規範性の面)
これが間違い。
・異質だから良いものもある→例えば美術の世界
・「女だから・・」は百年前は普通だったが、今考えれば悪
この善悪にさらに幸-不幸の軸が絡み(善=幸、悪=不幸)
異分子である事を悪と認識しない主人公は不幸せでなく
異分子である事を引け目に感じる白羽は不幸
・・・といった様な事を考えてました。
主人公は確かにアスペルガー的な病理をかかえているのでしょう。
しかしもしかしたら、人間は多かれ少なかれそうした部分があるのではないか、と感じながら読んでいました。コンビニエンスストアという高度にマニュアル化された世界に居場所を見つけた主人公と、社会機構の一部分として働くことを選んだ「普通の人たち」との間に、果たしてどれほどの相違があるのか、なんて。
白羽くんが登場してからは、主人公がずいぶんと「普通の人」にも感じましたです。
(*): https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/3a88c5a235bb8c2257b111d38ac393db
風邪をひいて、絶不調です。やれやれ。