電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

井上勝生『幕末・維新からシリーズ日本近現代史(1)』を読む

2014年07月01日 06時06分51秒 | -ノンフィクション
岩波新書の日本近現代史シリーズの第一巻、井上勝生著『幕末・維新」を読みました。内容的に、たいへん興味深く読みました。本書の構成は、次のようなものです。

第1章:江戸湾の外交
第2章:尊攘・討幕の時代
第3章:開港と日本社会
第4章:近代国家の誕生
第5章:「脱アジア」への道

中学生の頃に習った、無能で拙劣な幕府外交を、憂国の朝廷と薩長の雄藩が連合して討幕運動を興すことで転換し、新しい文明開化の時代を開いた、という「薩長史観」を覆すものでした。
実際には、情報をかなり正確につかんでいた幕府の外交は効果的なものでしたが、孝明天皇と激派公家たちは無謀な攘夷論をあおり、英仏等の諸外国も中国大陸をにらみ、幕府と薩長と二股をかけていたため、日本が侵略され植民地化される危険性は大きくなかったこと、大政奉還による合議政体論が薩長の実力行使によって頓挫してしまったのが実態だった、ということでしょうか。



子供の頃に、はじめて日本史を習った時、明治維新で世の中は新しくなったというのに、やれ台湾出兵だの征韓論だのと、やけに武力を乱用するものだなあと違和感を覚えたものでした。日本史上の細かな出来事は忘れてしまった今でも、その感覚が残っており、どうも好戦的・侵略的な薩長藩閥政府のイメージが抜けません。
むしろ、

「幕末日本の大方が攘夷で沸き立ち、そうした世論の中心に天皇・朝廷の攘夷論があったという維新当初から強調された、日本開国の物語こそが、事実と違う」(p.239)

というところに、「そうだったのか~!」と目からウロコが落ちる思いがしました。


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