電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」を聴く

2020年06月28日 06時02分05秒 | -オーケストラ
退職して通勤がなくなった昨年は、毎日決まった時間に音楽を楽しむという習慣がなくなり、日常生活の雑事の中で音楽を聴く時間を意識的に作り出す必要に迫られるようになりました。ところが、若い人の育休代を頼まれたこの春から、再び通勤の音楽を楽しむこととなり、以前の半分程度の時間ではありますが、CDやUSBメモリに複写した音楽を再生して聴いております。

最近、もっぱら繰り返し聴いているのがハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」で、例の、フィギュアスケートで有名になった「ワルツ」を含む5曲が、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団の演奏で収録されたCD、DENON の COCO-73018 という型番のものです。

組曲の5曲というのは、

  1. ワルツ
  2. ノクターン
  3. マズルカ
  4. ロマンス
  5. ギャロップ

というものですが、グルジア生まれのアルメニア人であるハチャトゥリアンが、演劇の演出を手がける兄の縁で劇場に親しみ、レールモントフの戯曲「仮面舞踏会」のために作曲した音楽から自ら抜粋してオーケストラ用の組曲に編んだものだそうです。

この戯曲の内容というのが、シェイクスピアの「オテロ」のように、無実の妻の不貞を疑い、嫉妬のあまり妻を毒殺するというものです。例の「ワルツ」は、嫉妬に狂った夫が舞踏会で妻のアイスクリームに毒薬をふりかけ、それを食べた妻が帰宅後に舞踏会を振り返って、胸が締め付けられるような思いがしたわと語る、たぶん毒が徐々にまわってきている状況。優雅なワルツではなく、切迫感が伴うドラマティックな音楽です。また「ノクターン」は、劇の前半、妻よりも先に仮面舞踏会から帰宅した夫アルベーニンが過去を追想する場面だそうで、ヴァイオリンソロが物憂げに息長く歌う音楽です。
こんなふうに、音楽は劇の進行順序とは関係なく編まれているようで、演奏効果や曲終了後の印象などを考慮して、あまりに暗く陰惨になりすぎないようにしたのでしょうか。

そもそも仮面で顔を隠してダンスを踊る社交の会を催すなどという品性を疑う慣習(^o^;)は、いつ頃、なぜ行われるようになったのか、そちらのほうが興味深いものですが、アナログ録音全盛期の1972年、チェコのスプラフォンが収録した録音は充分に鮮明で、ダイナミックな音はロードノイズの中に埋もれることなく、通勤の時間を楽しむことができます。


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