欺す衆生 月村了衛
古本屋で、何気に見つけて読んでみたら
これはなかなか面白い本でした
何かの賞もとってるはずです
豊田商事事件ってご存じでしょうか?
1980年代の事件です
トヨタ自動車とはなんの関係ない豊田商事という会社
何も知らない一般人は、勝手にトヨタ関連かと思い込む
その豊田商事が行ったのは「金」を買わせて
「金」を渡さず「金証券」だけを渡し
年間高利回りを約束し、利子だけを払い続けるという
「金地金商法」という詐欺
実際の「金」を渡すこともなく、利子だけを払い続けて
信用させ、資金を集め、自転車操業を行っていきます
被害に遭うのは、なけなしの老後の資金を増やそうとした
老人たちです。
そんな詐欺が長続きするわけもなく、やがて破綻し社会問題化します
首謀者の豊田商事会長の永野某はマンションに引きこもり
逃げてましたが
1985年、テレビを見ていたら
永野某のマンションの踊り場に大勢の報道陣が詰めかけてました
その状況を生放送している最中に、男二人が現れ
報道陣の目の前で、アルミサッシの窓をぶち破り
部屋の中へ入っていきました
そして、出てきたときには2人は血まみれで
警察を呼べやとか怒鳴ってました
衆人環境のなかでの殺人事件がリアルタイムで報道されてました
それを生で見ていました
当時はやっていたフライデーとかの
写真週刊誌では、犯人に切られて血みどろになった
永野某の写真がアップで載ってました
衝撃的な事件でしたね
この「欺す衆生」という小説の冒頭のシーンは
この場面から始まります。
豊田商事をもじった横田商事に務めていた隠岐が主人公
隠岐は横田に務めていたことをひた隠しに隠して
第2の人生を歩もうとしていたのですが、
横田残党の因幡に目をつけられ、再び詐欺の道へ足を踏み入れることに
関東山奥の原野を嘘の開発計画をでっち上げ高く売りさばく、原野商法
北海道の牧場を舞台にした和牛商法など
隠岐は因幡とともに詐欺の道にどっぷりとはまっていきます
金の臭いにつられて、あつまってくる横田商事の残党や
やくざの蒲生。
当初は、自己嫌悪に陥る隠岐でしたが、詐欺の魅力に取りつかれていきます
金とバイオレンス、なかなか面白い
700ページの大物ですが
一気に読めます。
おすすめです。