畠山義綱のきままな能登ブログ

畠山義綱が見てきた史跡を紹介します。
時々、経済や政治などもつぶやきます。

七尾城の復元について思うコト

2009-08-17 21:33:00 | 政治・経済
 私はこの夏に栃木県宇都宮市の宇都宮城(近世平城)と愛知県豊田市の足助城(中性山城)と復元城郭を見てきた。宇都宮城は堀・土塁・2つの櫓の復元で合計36億円の費用がかかった(宇都宮市の負担は9億円)。足助城は全部で5億円の費用だそうだ。
 近世城郭を復原しようと思えば、宇都宮城のように多大な予算がかかる。さらに、現在もっとも復元に力を入れている近世城郭の熊本城は復元・整備計画に90億円を見込んでいる。しかし、内訳をみると、現在復元工事中の「本丸御殿大広間」こそ54億円という途方もない数字であるが、外観復元のみの二層櫓である「未申櫓」は3億円、一層櫓である元太鼓櫓は2億3千万円とそこそこである。復元に関するほかの城の費用を調べると、延岡城(近世城郭)の大手門の復元には1億円、土浦城(近世城郭)の塀の復元は49mで1900万という。装飾が華美な近世城郭でも櫓や門、塀ならそこそこの費用で復元できる。
 七尾城も畠山氏時代の中世城郭なら費用もそれほど多くかからないのではないか。例えば、中世山城である足助城は、二層の高櫓や復元建物を数棟建てても全体で費用は5億円である。七尾城のこれからの発掘調査で、どんな結果がでるかわからないが、例えば足助城と同じように城壁を木柵で作るとするなら費用も格段に安く抑えられるはずである。これらのことを考えれば、七尾城でも、それこそ調度丸~遊佐屋敷~本丸くらいの復元であれば、費用も15億円程度に抑えられるのではないか(城域の広さをみて足助城の3倍として計算してみた)。さらに七尾城は国指定史跡なので、国からの援助も仮に期待できるとして、費用負担額を熊本城を例に計算してみよう。

・熊本城本丸御殿大広間の復元総費用 54億円
・市民らの寄付金総額 約12.5億円(27000件あまり)
・市民債の発行 19億円
・まちづくり交付金 18億円
・文化庁からの獲得予算 10億円

 ということを考えると、おおよそ国からの補助は50%となる。仮に七尾城の復元費用を15億円とすると、七尾市民からの寄付金+市民債の発行で7.5億円を確保することになる。七尾市の平成20年度予算の歳入総合はおよそ250億円ほどなので、市民の理解が得られて、寄付金が集まることを前提にすれば無理な金額ではない。しかし、これは復元費用だけの計算であり、七尾城の城域は現在ほとんどが民有地であり、これを公有化しなければ復元ができないことは言うまでもない。その取得費用を考えると(と言っても復元しない地域は無理に公有化をしなければいいのであるが)、もう少し費用は増えることになる。仮にまったくの推測として土地代を約2.5億とすれば、復元費用の市負担額は約10億円となる。

 しかし、もうひとつ問題がある。七尾城は1934(昭和9)年に早々と国指定史跡に指定されながら、なぜ今まで発掘調査が行われてこなかったのか?この一市民である私の素朴な疑問は七尾市議会にも届いていた。
 ある七尾市議のひとりが七尾城の整備活用に関する質問をしたのだが、これに対する武元七尾市長はこのような答弁をしている。

 「(七尾市内には)国の史跡指定がたくさんある中で、どれもこれも早く整備をしなきゃならないという状況であります。(中略)加えて七尾城なり万行の遺跡を考えた場合に、非常に膨大な作業といいますか予算といいますか、そういった状況でありますので、本当に七尾城のことにつきましても努力いたしているわけでございますが、非常に難しい状況であります。そういう状況の中で、幸いにも七尾城は発掘はしなくても現状のままでも多くの皆さんに来ていただけるという、そういうことでありますので、先ほどのお話にありましたように日本百名城に指定をされたことを機会に、さらに七尾城を全国発信していかなきゃならないというふうに思っております。」
と述べている。

 素直に答弁を解釈すれば「七尾城の活用を図っていきたい」という風に聞こえるが、穿った見方をすれば「現状でも七尾城は観光客が来るので、それほど大規模な発掘調査などは後回しでもよい」というように聞こえる。実際、「七尾城の保存・整備計画書」の作成も七尾城域(七尾城下町地域)を通過する能越自動車道が完成するまでは取り掛かれないとしているのは、後回しでよいという、見方の徴証とも言える。一刻も早い七尾城の復元・整備が進むことを望む。