ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

またまた東北

2008-10-14 23:16:42 | 能楽

ども、ぬえです~

またしても、の小中学校巡回公演に出かけております。今回の出張先?は宮城県、岩手県、秋田県、青森県の四県のそれぞれ一校ずつを廻る三泊四日の旅です。先週は宮城県内の五箇所の学校を廻ったのに比べると、今回は移動距離が長いです。

今日は早朝に東京を新幹線で出発しまして、宮城県の中部に位置する村田町というところの村田第二中学校で、前回と同じく能『安達原』が ぬえの師匠によって上演されました。

遠くに美しい山並みを眺め、田園地帯の中に建つ中学校。公演準備を進めていると、時ならぬ太鼓の響きが会場となった体育館の中に響いてきます。???なんだろう。。見てみると、昼休みのあいだに生徒10数人が校舎の狭い中庭で和太鼓を打ち鳴らしています。どうやら文化祭が近いらしく、そのための練習でしょうか。以前、秋田の大館だったかなあ、小さな公園で薪能を行ったことがあるのですが、そのときも「前座」?として地元の方々による太鼓の演奏がありました。このときも能よりも太鼓の演奏の方がお客さまの反応は良かったような。。(^◇^;)

ぬえが子どもたちを教えている伊豆でも思うことですが、郷土芸能は脈々と土地に息づいているものですよね~。生まれも育ちも東京で田舎というものを持たない ぬえにとっては、能の道に進んでから気づかされた事も多いですが、こういう郷土に残された文化が、じつはまだまだたくさん残されていて、しかも強力に継承されている姿は、まさに驚くべきことでした。東京には本当に希薄だもんなあ。。うらやましい限りです。

さて公演は、またまた大喜びで迎えられたと思います。ぬえはこの公演では地謡に参加しているのですが、みんなが楽しんでいることは感触となって伝わってきます。ことにこの学校では終演後の質疑応答が、それはそれは活発でした。声の出し方や囃子の掛け声など、身体的な興味にまで質問が及んでいたのは感心です。

そのうえ、これは ぬえは本当に感心したのですが、公演の終わりに、生徒の代表から「お礼の言葉」が演者に送られました。ふむ、こういうことは よくある事なのです。そして、その全てがとは言いませんが、多くの場合は事前に原稿が用意されていて、先生などの推敲を経て代表の生徒によって読み上げられている感じのことも多いのですが。。このときは明らかに違いました。代表となった生徒の気持ちが表れている言葉で、本当に感激しました。お礼の言葉の最後は「みなさん、がんばってください」で、こういう言葉は作られた言葉ではないでしょう。

村田町を後にして、いま ぬえは岩手県の一関市に投宿しています。文化庁の企画となるこの公演、ぬえたち演者にも大きな印象を残しております。またまた楽しい旅が続くといいなあ。