ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第16次支援活動<気仙沼市・登米市>(その4)

2013-10-08 01:57:31 | 能楽の心と癒しプロジェクト
上演終了後は仮設住宅で恒例のお囃子体験会と装束の着付け体験会。
いろいろ、試行錯誤しながらやってきましたが、囃子は文句なく喜ばれますね。そうして装束。面よりも装束の方が喜ばれるのは、震災以来着物なんて着たことがなかった。。という おばあちゃんが多いから。一度などは目の前で涙があふれちゃった方もありました。この日は爆笑のうちに(なぜ??)体験コーナーは進みました。













そうしてその後。今回の仮設訪問の目玉企画である、市民起業家さんたちによる住民サービスです。

以前にもご報告しましたが、気仙沼には震災前から障害児童の支援団体「ネットワークオレンジ」という団体がありまして、ぬえたちも ふとしたことからその事務所で活動をさせて頂きました。もう1年半も前のことです。その後は、なんとなく、つかず離れずお付き合いしている、という感じではありましたが、今年に入ってからにわかにお近づきになり、5月には新拠点の落成式に出演、そこからまた どんどん人のつながりの輪が広がりました。

その落成式で、まずはリーダーの小野寺美厚(みこ)さんの類い希な才能と、未来まで鋭く見据えるビジョンの確かさに本当に感銘を受けたのですが、もうひとつ、「ネットワークオレンジ」さんが支援する起業家育成の講座を受けて国の助成プログラムに合格した起業家さんたちと知り合ったのが大きな収穫でした。

起業家といっても大層なビジネスマンではなく、お隣さんのような気軽さで街の中に溶け込んでいく、それこそ地域の中に生きる小さなお店、という感じの経営者の方ばかり。この落成式で ぬえは大いに意気投合しまして、それならば、ぬえたちプロジェクトの仮設住宅での活動にご一緒して頂けないか、と その場でお願いし、みなさんも即答でご協力頂けることになりました。

それからの懇意な関係。。ええい、もう名前を出しちゃえ。

この度の仮設住宅での ぬえらプロジェクトの活動に同伴くださり、住民さんサービスを提供してくださったのはこの方々!

村上緑さん:パワーストーン Green (ストラップのプレゼント、お手持ちのブレスレット無償修理)
村上寛さん:コンビニエンスサービス ヒロ (ご家庭のお困りごとお手伝い・代行サービス)
米倉三喜子さん:復康フットサロン よつば (足ツボマッサージ体験)
村上朋子さん:ココ・カラ (心と体に関する無料相談や症状を軽減する無料マッサージ)
白幡まさえさん:おぢゃのみ工房 子葉輝 (がんづき と しそジュースのサービス)

ね? いいでしょう? これらの方々にはこの日と、あるいは翌日の別の仮設の2カ所の両方、またはどちらか1方でお手伝い頂いたのですが、これ、まさに仮設のような、住民さん個人の困りごとに寄り添うことあ必要な場に、きめ細かいサービスができる内容だと思います。ゴメンなさい、でも実際の活動を写した画像がないのです。。



ぬえたちの活動は もっぱらお能をご覧頂く「癒やし」の活動だったわけですが、それだけでなく、つまり「見せっぱなし」でなく、住民さんにお楽しみ頂ける活動が、とくに避難所や仮設住宅では必要、と、ようやく気づいたのが活動を開始して半年も経った2011年の暮れぐらいだったでしょうか。

それから山形県のお坊さんの炊き出しボランティアと一緒に活動したり、ぬえたちだけの時は試行錯誤しながら「体験コーナー」の充実を図って行ったのでした。段々に時間の比率は、上演時間よりも その後の体験コーナーの方が長くなっていきました。

震災から2年を経て、ぬえたちの活動も、能だけでない、いろいろな楽しみが詰まった活動にしたい、と考えています。そのひとつがピアニストと一緒に活動したり、星空を投影してロマンチックな空間を作り上げる活動。。ぬえはナマイキにもその方針を「文化の復興」を目指す活動の一環、と考えているのですが、また一方、その活動が、結局「ご覧頂くだけ」の活動に逆戻りしていないか? という思いは常に持っていました。美しい夕暮れやキャンドルの中での能楽鑑賞と、住民さんに装束を着付けて、ちょっと格好つけて頂いて、みんなで爆笑、という活動は相反した方向性を持っています。それを上演するのが仮設住宅なのか、被災を免れた美術館なのか、でも違うとは思いますが、どこかで融合できないか、とも考えてはいます。

そんな混乱した思いの中で、今回はあまり深く考えもせず。。いわば炊き出しの代理として、という程度で ぬえは起業家さんたちにご一緒の活動をお願いしたのではないか、と思います。しかし、彼女たちから ぬえに提出された住民さんサービスの、そのきめ細かい内容を見て、ぬえは正直、衝撃を受けました。こんな、ご近所さんのお付き合いの延長のようなサービスを、ぬえたちはやって来ませんでした。もう2年半も活動しているというのに。

おめ、肩凝っでるなあ、ダメだよぉ、考え込み過ぎねで、たまには力抜いでリラックズしねえとぉ。

ぬえたち、やっぱり余所者なのかもしれないなあ。美しい能装束を着て頂いても、本当にこの住民さんたちのお側に寄り添っている、と言えるのかしら。なんか、着付け体験が急に色あせてしまったように見えました。復興は、どこまで行っても住民さんたちで成し遂げるもの。ぬえたちの目線は、やはりどこか東京のものなのかも。

でもまあ、たまにしか東北を訪れることができない ぬえたちにとっては、それで仕方がないのかも知れませんね。見守る、その日だけは楽しんで頂く。それで良いのかも。ともかく、これら市民ボランティアさんに負けたな。。と思った、そんな日でした。気分は良いのですよ? 一緒に活動できたことが ぬえには嬉しい、そんな日でもあったのです。

(撮影:前島吉裕)