ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第16次支援活動<気仙沼市・登米市>(その9)

2013-10-21 09:35:13 | 能楽の心と癒しプロジェクト
ただいま17次の活動中で、昨日の東松島市・矢本の活動のあと気仙沼に宿泊しております。今日は陸前高田で活動予定。昨日の大雨がウソのように陽が差しています~

さて8月の16次活動のご報告もようやく終盤、最後の上演地は、初めて活動する登米市です。

登米市は南三陸町、気仙沼市、石巻市、栗原市、大崎市、それに岩手県の一関市などに囲まれた内陸に位置し、平成の合併で9つの町が集まって出来た大きな市です。内陸にあるため津波の被害はなかったのですが、地震では大きなダメージを受け、またもともと南三陸町と地縁が深かったため、市内に仮設住宅を受け入れ、多くの避難者が市内で暮らしておられます。

プロジェクトとしては、笛のTさんの友人関係がとっても深くて、今年3月に気仙沼市で行った「星と能楽の夕べ」公演では ほとんど登米市出身の方々によるボランティア・スタッフさんが八面六臂の大活躍をしてくださり、ぬえも信頼感を厚く持ちました。このご縁から初夏には登米市の神社などに伺う機会も得、また南三陸町での今後の活動についても展望が開けてきました。

一方、じつは登米市には立派な能舞台がありまして、それは県指定の民俗文化財となっている「登米能」(市の名称の読み方は「とめし」ですがこちらは「とよまのう」と読みます)の伝承・保存のために建てられた「伝統芸能伝承館」。緑豊かな屋外に建てられ、白砂の敷かれた庭を隔てて近代的な見所から舞台を見る、まさに本格的な舞台です。このたびは関係者のご尽力によって、こちらの舞台で能『猩々』を上演させて頂きました。ん~、被災地に来て橋掛リを歩んだのはこれが初めて。なんだか、むしろ勝手が違うような、妙な違和感を感じた ぬえはちょっと感覚がおかしくなっているのかしら。













この日、いまこの記事を書いている10月からは考えも及ばないですが 相当な暑さで、楽屋内もかなり厳しい状態でした。これでは公演も成立するかしら? と思いましたが、開演時間にはお客さまも大勢お集まり頂いて、文化水準の高さを窺わせます。終了後はここでも囃子の体験と装束の着付け体験コーナーもちゃんとやりました。









終演後、市長さんと一緒に記念撮影。登米市にはほかにも重文指定されている「旧登米高等尋常小学校」などもあるそうで、文化の香り高い町ですが、これらの史跡にもやはり震災の地震の被害もあったとのこと。プロジェクトの目標としている「文化の復興」についても聞いて頂くことができ、今後も登米市で活動が続けていければ良いな、と考えています。まずは登米市内にある仮設住宅の訪問から始めるのがよいかも、と 今後の活動について考えを廻らせております。



こうして第16次の活動は無事に終わりました。
今回は地福寺さんでの美しい法要、久しぶりにお邪魔することができた気仙沼の仮設での活動、そして登米市の本格舞台での上演と、印象深い活動となりました。またそれぞれの活動会場でも大変温かいおもてなしを受けて、やりがいを感じた活動でもあったと思います。まして、はじめて気仙沼の市民がボランティアとして活動に強力なご支援を頂いたことは、プロジェクトの活動としても画期的なことでした。
プロジェクトの活動に共演頂いた能楽師・太鼓のOさん、ピアノの御子柴さん、それから起業家ボランティアさんのみなさん、能楽写真家のMさんにはご協力に大変感謝しております。お疲れさまでした~。また上演を受け入れてくださった気仙沼の鹿折中学校仮設と反松仮設、地福寺の片山秀光さん、登米市の関係者のみなさんにも心から御礼申し上げます。反松仮設でお目に掛かった、仮設での医療支援を続ける村上充さんともお目に掛かることができ、その意義深い活動について知ったとともに、我々プロジェクトの今後の活動についてご協力頂ける可能性があります。どうぞ関係者各位には今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます~。

                                 【この項 了】
(撮影:前島吉裕)