3回目を読んでいた本がありましたが、バッグに入れるとパンパン。
で、手ごろな本を買って当座を凌ごうと、古本屋で手に取った須田努著「幕末社会」。
読み飽きるようなら途中で投げてもいいかなと開きましたが、、、
これが、なかなか途中で投げられないで、ついつい最後まで読み終えました。
激動の幕末期30年間を歴史的事実を簡単に抑えながら、なぜ幕藩体制は崩れたのか、誰が壊したのかを、特に、在地社会の個性ある個々に光を当てて描かれていて、とても興味深く読みました。
そこには、みずから動きだす百姓、自己主張を始める若者、新たな生き方を模索する女性など、活き活きと描かれています。
ただ、それはごく一部の地域、ごく一部の人たちであり、多くの民は薄っすらとした不安を持ちながらも懸命に日常を送っていたようです。
紹介された何人かの女性たちの中に、平田国学を学び、和歌に長じた伊那谷の松尾多勢子が取り上げられています。
彼女の肖像画が掲載されていますが、お茶目なおばあちゃん。
交通の要衝でもあった伊那谷は、平田国学もあって豊かな地域文化を形成し、地域としても独特な生き方をしていたようですが、そのネットワークの中核に多勢子さんもいたと。
地域からも社会に大きな役割を果たす女性が生まれてきた時代だったようですね。
著者は、おわりにの中で「わたしは、彼ら・彼女らの行動と思考を丹念に解きほぐし、現地を訪れ、その“空気”を感じようと努めた」と書いています。
現地を訪れ、その空気を感じる、歴史を学び、考える上で最も大切なことですね。