できるだけ、わたしを安らげてあげるようにする。その役目を持つのもわたし、である。できるだけわたしを愉快に心地よげにさせてあげるようにもする。その役目を負っているのも、それもわたしである。わたしをしっとり気分にさせて涙を落とさせることもある。その役割を演じてくれるのもやっぱりわたしである。わたしを重圧に押し込めて忍耐を獲得させることもある。
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わたしは一人しか居ないが、しかし、数人に別れることもできる。Aのわたし、Bのわたし、Cのわたし、という具合に。
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ときには10人、ときには100人、いやいや1000人ほどにも分散分立していることだってありそうだ。新手新手のわたしが登場してそれぞれに合った役目を果たせるようになっているのかもしれない。よくできているもんだ。
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よくできているもんだ。わたしの一人がダウンしてもすぐにもう一人の新しいわたしが誕生してすっくと立ち上がる。とにかく何人もの何人ものわたしが居るんだから、オシマイにはならない。再生を果たす。わたしはタフなのだ。
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わたしを一人にしておかない。人は誰もが分身の術が使う。使えるようにしてある。10人100人1000人になって、わたしを支えているのだ。こういう芸当を持ち合わせているから、人間というのはスゴイ。スゴイイキモノだ。ひ弱にはできていないのだ。
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いいじゃないか。いろんないろんなわたしを楽しんでいいじゃないか。わたしを単独にしていないでもいいのだから。