第126回 2016年5月24日 「暮らしにクールな輝きを~岐阜 関の金属製品~」リサーチャー: 映美くらら
番組内容
今、セレクトショップで話題の、クールでスタイリッシュな鉄製家具。鉄とは思えない軽やかさが人気の秘密だ。また、日本のみならず世界でも評判の、軽くて丈夫なスマホケースは特殊なジュラルミンを使ったもの。2年前の発売以来、15万円ほどの価格にもかかわらず、数百個が売れている。さらに包丁作りの伝統のワザを生かした最新システムキッチンなど、岐阜県関市が生み出す魅力的な金属製品の秘密を、映美くららが探る。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201605241930001301000 より
刃物の町・岐阜県関市の職人の皆さんは、加工しづらい金属を自在に扱いこなして、より便利に、よりスタイリッシュに、現代の暮らしを彩る金属製品を生み出し続けています。
1.アイアン家具(杉山製作所)
岐阜県関市には、金属製品を作る企業は250社以上あります。
番組では、洗練されたフォルムが人気の鉄製の家具を作る「杉山製作所」の工場におじゃましました。
こちらでは、6人の職人さんが300種類以上の家具を作っています。
そんな中でも、細い鉄材を組み合わせた「アームチェア」が特に評判です。
岐阜・関市の鉄製品工房から、アームチェア作りを紹介。
部材を正しい寸法に切り、曲げるなどの加工し、溶接機で繋げていきます。
背中の重みを支える後ろ足は、独特のカーブを正確に作っていきます。
デザインを決める肘掛けの部分は、丈夫さと美しさにこだわっています。
岐阜県関市にある鉄のプロフェッショナルメーカーの「杉山製作所」さんは、鉄の加工や溶接を専門として昭和37(1962)年に創業しました。
当初は自動車部品を製造していたのですが、平成12(2000)年に「アイアン事業部」を立ち上げ、インテリアや什器に一本化。
まず、店舗用什器ブランド「KEBIN」を発表。
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更には暮らしの中にも鉄を取り入れてもらいたいと住宅用家具の製作にも乗り出し、「クロテツ」や「FACT」を始め、プロダクトデザイナー・柴田文江さんとコラボした「Fe」などの鉄家具ブランドを次々と展開。
平成26(2018)年には建材ブランド「FIT」を立ち上げ、住まいを総合的にコーディネート出来る鉄家具メーカーとしての地位を確立しています。
「鉄で人を幸せにする」を理念に、鉄にこだわりをもった製品づくりを行っています。
杉山製作所 factory shop「tetsukurite (テツクリテ)」 岐阜県関市旭ヶ丘3-1-13
2.システムキッチン「トーヨーキッチンスタイル」
鎌倉時代に始まった「日本刀」作りが「包丁」作りへと発展した歴史を持つ岐阜県関市では、現在、その技能を活かした「システムキッチン」の製作が盛んに行われています。
現在、オリジナルプレミアムキッチンを中心としたインテリア全体をプロデュースする日本のトップブランドである「トーヨーキッチンスタイル」もそんな企業の一つです。
「トーヨーキッチンスタイル」は、昭和9(1934)年に「東洋食器製作所」として関市で創業しました。
元々は、ステンレス洋食器メーカーとして、「ステンレス包丁」などを作っていました。
昭和33(1958)年に、ステンレス流し台「トーヨー流し台」の製造に着手、以後はステンレス加工を得意とする国内有数のキッチン専門メーカーとして知られるようになりました。
現在は、独自の高度なステンレス加工技術を活かしたキッチンや家具を製造し、日本に「アイランドキッチン」の文化を広めました。
平成26(2014)年の秋より、「トーヨーキッチンスタイル」と社名を変更しています。
関市の伝統の技は、水切りを良くするために流麗な形状が求められる「シンク部分」に生きています。
素材は、鉄にクロムやニッケルを加えた「合金ステンレス」。
強度がある一方、加工しにくい金属です。
シンクは繊細な形のため、機械でなく手仕事によって作られています。
「溶接工」の手を経たシンクは、「叩き専門の職人」の元へと引き渡され、職人が溶接した部分を叩いて一枚板のような形にする。
工場長の増田清治郎さんによれば、ステンレスには溶接すると縮む特性があるため、「叩く」のは縮んだところを伸ばすためなのだそうです。
均等に叩かないと仕上がりにムラが出るので、注意が必要です。
叩きの後は、これも専門の職人により「磨き」が行われます。
目の粗いものから細かいものまで、曲面の形に合わせて使うやすりも変えていくのだそうです。
52年間この磨き作業に従事してきた職人の川嶋洋さんは、この仕事について「毎年毎年1年生、満足はしていません」とおっしゃっていました。
3.最新テクノロジー × 職人ワザ「The Slit for iPhone 6」(SQUAIR)
岐阜県関市で作られたスマホケースは、値段こそ15万円近くするものの、日本のみならず世界でも評判で、発売以来400個を売り上げている。(放映当時)
アルミニウムに亜鉛やマグネシウムを混ぜた「超々ジュラルミン」という特殊合金で作られていて、32gと軽量ながらとても丈夫。
その強度を東京都立産業技術研究センターで検証したところ、「超々ジュラルミン」はアルミニウムの3.5倍の重さに耐えられることが判明しました。
このスマホケース工場には、自動で3D加工が出来る5000万円の機械が導入されていて、機械の作業工程は2時間前後。
その後は手作業で、職人の長沼修司さんが伝統ヤスリを使って丹念に「バリ」を取っていました。
バリを取った後は、磨きの作業。
2時間後に完成したスマホケースは、滑らかな手触りになっていました。
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Gifu/MetalProducts-2 より
「関の金属製品」
関市は、日本のほぼ中央に位置し、鵜飼と清流で名高い長良川の中流部にあって、歴史と伝統を持つ全国一の刃物産地であると同時に、五箇伝と呼ばれる刀の伝統を現在も引き継ぐ刀都でもあります。また、令和2年国勢調査における日本の人口重心は関市内(中之保)にあり、関市はまさに日本の真ん中に位置しているといえます。
関市の刃物の歴史は古く、鎌倉末期から南北朝時代の刀造りからはじまり、室町時代には孫六兼元、兼定らの有名な刀匠を生み、最盛期には300人以上の刀匠を有する刀の産地(美濃伝)として栄えました。関の刀は「折れず、曲がらず、よく切れる」と言われ、優れた実用性を誇る名刀として多くの武将に愛用されてきました。しかし、江戸時代になり刀の需要が低下すると、多くの刀匠が包丁、小刀、はさみ等の打刃物鍛冶に転向し、家庭用刃物産地へと移り変わりました。
そして、明治に始まったポケットナイフの製造をきっかけに近代刃物の産地として発展し、現在では包丁、はさみ、ポケットナイフ、カミソリ、台所・食卓用刃物、ツメキリなどを多品種にわたり生産し、その約4分の1を輸出する世界的な刃物産地となっております。昨今では国内外の経済変動、海外製品との競合等厳しい状況下で、切れ味、デザイン性等品質向上の研究をはじめ、医療用刃物などの分野への進出のほか、刀の刃文をイメージするダマスカス鋼を使用した包丁や日本刀をイメージするはさみなどの新製品開発などに取り組んでいます。また、平成20年には「地域団体商標」として「関の刃物」を登録し、伝統と信頼の地域ブランドを広くPRしていくことで、刃物産業のさらなる発展を目指しています。
一方で、昭和59年に操業を開始した関工業団地をはじめ、平成18年には市中央部に位置する関テクノハイランドが操業を開始し、東海北陸自動車道と東海環状自動車道との結節地点という立地条件の利便性により、自動車関連部品製造業、機械器具製造業、金属製品製造業、樹脂製品等の化学工業製品製造業等の企業が立地・拡張するなど、複合的産業構造をなす都市へと発展しつつあります。今後、「先端技術型生産拠点」としての発展とともに、地域経済の活性化に寄与することが期待されています。
*関市HP より