第158回 2017年4月25日 「触れて感じる 森のぬくもり~高知 木製品~」リサーチャー: 生方ななえ
番組内容
都会にいながら森を持ち歩けると今人気の、杉のバッグがある。木目が美しく、手触り抜群。高知の東部・馬路村で作られたものだ。地元の銘木・魚梁瀬(やなせ)杉を生かすその製法とは?また隣の安芸市では、お風呂で遊べる木のおもちゃを製作。愛らしい海の生き物たちに、全国のこどもたちが夢中になっている。実はこれ、ある母親の思いから誕生したものなのだ。高知で生み出される木製品の魅力を生方ななえが徹底リサーチ。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201704251930001301000 より
1.monacca(エコアス馬路村)
高知県馬路村(うまじむら)の面積の96%は森林です。
豊富な雨量と温暖な気候のおかげで、良質な杉が育ってきました。
特に、馬路村魚梁瀬(やなせ)の代表的な森のひとつ「千本山」には、樹齢200年~300年、直径2m、樹高50mにも及ぶ、真っ直ぐにそびえ立つ神々しい天然杉の巨群に出会うことが出来ます。
その杉の美しさは「日本三大美林」のひとつにも数えられ、平成12(2000)年4月には、千本山登山口の天然杉が、林野庁の「森の巨人たち100選」に選ばれています。
天然木の「魚梁瀬杉」(やなせすぎ)は、淡紅の色合い、ダイナミックでありながらもキメ細かい木目が特徴で、節も少なく、柱材や天井板などの高級建材として人気があります。
豊臣秀吉は、洛陽東山佛光寺に大仏殿を建てる際に、全国から良材を集めた中で、第一に「土佐」第二に「九州」第三に「信州木曽」・「紀州熊野」の順番で木材を選んだと記されています。
長らく家の天井などに使用されてきましたが、木材価格の低迷によって森林環境は荒廃していました。
そんな中、高知県馬路村にある小さな林業会社「エコアス馬路村」が村の出資を受けて、森の再生のために、間伐や植林などを中心とする事業をスタートさせました。
「エコアス馬路村」は、平成12(2000)年に設立された第3セクターの会社です。
「明日きっとエコロジー、 いつか生態系循環の永遠の森につながるように」というポリシーのもと、
森を育てる
森を集める
森を加工する
森を販売する
森への還元 を実践しています。
「monacca(モナッカ)」は、「エコアス馬路村」の加工技術と工業デザイナーの島村卓実さんのデザインによって生み出された魚梁瀬杉の間伐材を使った不思議な形のバッグです。
清潔感のある明るい色合い、くっきり浮かぶ木目と抜群の手触り、それに清涼感溢れるスギの香りを感じられる木のバッグです。
製造工程が紹介されました。
まず、スギを90℃のお湯で柔らかく煮込んで柔らかくします。
巨大なスライサーで、水分を含んだままのスギを0.5㎜の厚さにスライスしていきます。
かつて紙が普及する以前には、仏具、包装材などとして、薄く加工された木の板「経木」が使用されていました。
この技術から着想し、馬路村の製品の多くは展開されています。
「monacca」を形作るのも、元はこの薄い板です。
紙のようにスライスされたスギのシートを6層に積み重ね、その間に特殊な接着剤を塗ったら、硬質アルミの金型で加熱しながらプレスして、立体成形していきます。
木は、樹脂のように伸びないため、薄い木を立体的で丸みを帯びた形にしようとすると、カーブにシワが出来てしまいます。
シワが少なく美しい曲線をつくり出すために、何度も試作と試行錯誤を重ねて、苦労の末に立体成形に成功させたそうです。
仕上げは、紙やすりとスポンジ付きのやすりで研磨していきます。
磨いた二枚の板を帆布で繋いで、バッグは完成しました。
なお、「monacca(モナッカ)」ブランドの売り上げの1%は、馬路村が開設した「千年の森基金」に積み立て、環境保全活動に寄与しています。
エコアス馬路村 高知県安芸郡馬路村馬路1464-3
2.山のくじら舎
近年、国内外からも高い評価を得る「土佐ヒノキ」。
高知は、ヒノキの産地としても有名です。
「土佐ヒノキ」は、「幡多ヒノキ」「四万十ヒノキ」などとも呼ばれています。
「土佐ヒノキ」は、材の芯の鮮やかな赤みと強い香りが特徴で、油脂分を多く含んでいるため、年月を経るごとに光沢が増し、耐久性も高いのが特徴です。
こういった特徴が評価され、京都の西本願寺の修復や新国立劇場の舞台の床材にも使用されています。
「山のくじら舎」は、馬路村のお隣、土佐湾に面した漁師町の安芸市にある高知県産の木材を使用した手作りの木のおもちゃとキッチンツールを作っている会社です。
「山のくじら舎」の製品は、触れると肌に吸い付くような質感や美しい木肌、優しく広がる香りから人気です。
「山のくじら舎」で使用しているのは、本来であれば山に残してしまうはずだった切り株や間伐材が中心です。
古民家を改築した工場では、15人の職人が腕を競っています。
ほとんどが子育て中の女性です。
11種類のおもちゃを順番に日替わりで担当して製作しています。
1日20個がノルマだそうです。
3歳と5歳の子を持つママ職人の小松さんは、魚の形が描かれたヒノキを糸ノコで輪郭を切っています。
作業は僅か1分。
小松さんによると、素早く迷いなく切ることで、滑らかな丸みが生まれるのだそうです。
その後、小松さんは、切り抜いた魚の表面を研磨し、塗装は無しで仕上げました。
魚をすくう網を添えて、完成です。
小松さんが作成していた、お風呂用木製玩具「おふろでちゃぷちゃぷ」は、大ヒットしました。
「山のくじら舎」の代表の萩野和徳さんは大阪府出身で、以前は新聞社に勤務していましたが、田舎暮らしへの思いが募り、平成12(2000)年に夫婦で安芸市に移り住みました。
ものづくりが好きだった萩野さんは高知移住後は大工として働こうと考え、新聞社を退職後、和歌山の大工訓練校に1年間通いました。
卒業して高知に移ると、思ったより大工の仕事が少なく、アルバイトをしていました。
そんな中、奥さんのママ友から、「子供がお風呂で遊べる、高知の木で作ったおもちゃが欲しい」と相談を受けました。
プラスチック製のおもちゃは世の中に溢れていますが、割れると先が尖って危ない、高知らしい木のおもちゃがあればと、萩野さんは我が子に遊ばせて、最も遊びやすい形や大きさを追求し、水に強く香りの良い「土佐ヒノキ」で作ったおもちゃを完成させました。
これが口コミで大きな話題となり、注文が殺到するようになりました。
平成22(2010)年には、高知にいらした秋篠宮殿下と紀子妃殿下が平成18(2006)年に誕生された悠仁親王へのお土産に購入されたそうです。
萩野さん「知らせを聞いた時は、本当に嬉しかったですね。」とおっしゃっていました。
山のくじら舎 高知県安芸市川北甲1967
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Kochi/Wood より
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