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イッピンNHK 「座り心地抜群!愛される木の椅子~長野 松本の木製品~」

2023-09-07 07:55:52 | イッピンNHK

 第137回 2016年9月27日 「座り心地抜群!愛される木の椅子~長野 松本の木製品~」リサーチャー: 山田まりや

 番組内容
 背もたれに細い棒を連ねた優美な姿。お尻の形に合わせた座面の緩やかなくぼみ。美しさと座り心地の良さを兼ね備えた木の椅子がある。17世紀のイギリスで生まれた「ウィンザーチェア」を、戦後まもなく松本市の工房が研究を重ねて作り上げたもので、今も年間1200脚あまりを販売するロングセラー。そして、軽さや安定性が「子どもに優しい」と大人気の椅子など、使いやすくて美しい、松本の木製品の魅力に山田まりやが迫る。

*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201609271930001301000 より

 松本のウィンザーチェア

 城がそびえる長野県松本市。訪ねたのは明治創業の老舗ホテル。

 自慢はエレガントなロビー。
 全て地元で作られた家具が設えられているんです。

 このシックな椅子。
 「丸を見たようなこういうデザインが素敵」
 直線と曲線が織りなす優美な形。座面の緩やかなくぼみ。

 思わず触ってみたくなる美しい木の椅子です。

 今日のイッピン。松本のウィンザーチェア。

 イギリス生まれですが、松本で半世紀以上作り続けられているロングセラーなんです。

 今、松本では新たな個性的な椅子が続々誕生。

 多くの職人たちが腕を競い合っています。

 今話題の子供用の椅子。安定性ややさしい形など隅々にまで心配りがなされています。

 子供から大人まで人々に愛される松本の椅子の魅力に迫ります。

 

 長野県の中央。山々に囲まれた松本市。

 古くから木工業が盛んで、松本市とその周辺には150を超える関連企業があります。

 古い蔵が立ち並ぶ中心街にウィンザーチェアを作る工房がありました。

 池田素民長((年英国調の家具を作り続けている松本民芸家具・創設者の池田三四郎の孫、常務取締役))さん。

 会社の創業は昭和19年。テーブルや椅子を中心とした洋風の家具を800種類以上作ってきました。

 中でも人気なのがウィンザーチェア。
 年間1800あまりが売れています。
 「イギリスではもっともポピュラーな椅子ですね」

 ウインザーチェアーの誕生は17世紀のイギリス。

 貴族お抱えの椅子職人が、庶民のための安価でくつろげる椅子を作ったのが始まり。

 今もパブやカフェで頻繁に目にするイギリスの国民的な椅子です。

 足や背もたれの棒・スピンドルを座面に取り付けているのが特徴で、細いスピンドルによる優美なシルエットを持つタイプが典型的。

 さらに座面には座り心地を良くするためにくぼみが施されています。

 この工房では、昭和23年以来ウィンザーチェア作りに取り組んでいきました。

 「もう触ってもらうとわかるんですけども、微妙に彫り具合が違うんですよ。でこれ手で削って作っていくんです。手仕事じゃないとこの線ができない」

 手仕事による座り心地の良い椅子。ロングセラーに秘められた技を見ていきましょう。


 山田さん作業場へ。
 「ここが一番最初に作業する場所なんですけど」

 椅子の材料は寒冷地で育つミズメザクラ。
 繊維の密度が高く硬くて丈夫なんです。

 椅子を構成するのは28のパーツ。それぞれを大まかに切り出していきます。

 これが座面の原型。
 いよいよ良い座り心地のポイント画面の加工作業。

 担当はこの道20年の島村誠さん。

 座面を形作る「座繰り」
 まずは全体を荒削りします。
 使うかんなは普通に使われる箱型ではない特殊なもの。

 島村さんが使うのは「四方反りカンナ」
 歯の周囲が木に当たる部分に丸みをもたせているので様々な局面を削り出せます。
 徐々にくぼみが深くなっていきます。
 島村さん定規を座面に当てました。
 何を測っていたんでしょうか。

 「高さはこのぐらい指が入る感じで、型がないので、この入り方。ここがなだらかになっちゃうとおしりのほうが滑ってきちゃう。座り心地が変わってくるので」

 削る深さは島村さんの指が基準。
 1.6 CM 。

 これが良い座り心地を産む深さなんだぞう。
 座り心地の良し悪しは座った時の骨盤の状態に関係しています。
 最適なくぼみの場合、骨盤は安定し、すっくと立っているような状態。背骨は緩やかなS 字ライン。これが人の最も自然な姿勢で疲れにくいんです。一方、くぼみがなかったり暑いときは骨盤は後ろに倒れた状態に。姿勢も猫背気味に。くぼみが深すぎるとやはり骨盤が倒れ腰や背骨に大きな負荷がかかります。指一本分。1.6 CM の深さは骨盤をきちんと畳んで快適な座り心地を生む深さだったんです。

 指先に全神経を集中しながらの作業。
 削り続けることを1時間。
 抜群の座り心地を呼ぶなだらかな座面ができました。

 組み立て作業を担当するのはこの道24年渡辺一さん。
 出来上がった座面に背もたれやアームを取り付けていきます。
 まずはスピンドルと言う細い棒から。

 あらかじめ太めにしておいた木の棒の先端を叩き潰します。
 「木殺し」と言います。

 接着剤をつけた穴に差し込むと、潰れた部分が接着剤の水分で膨張していくのでがっちり組上がるんです。

 こうして体を優しく包む絶妙な角度で固定されました。
 次は大きく曲がるアームを取り付け、スピンドルを固定します。
 このアームは一本の木を曲げて作ったもの。
 木を水につけ蒸気にさらし何日間もをかけて柔らかくした後曲げるんだそう。

 最後は背もたれのアーチ。
 全てのパーツがピタリと合うように調整をしていきます。
 こうして組み立ては完了。

 最後にラッカーを12回塗り重ね、漆を思わせるような深い艶を出したらついに完成です。
 美しく座り心地もいい椅子。丹念な手仕事から生まれた逸品です。

 

 イギリスの手仕事を松本に
 松本に木工業の交流をもたらしたのは松本城。
 16世紀末の本格的な築城の際、全国から腕の立つ職人が集められたのです。
 江戸時代後期には和家具の生産が盛んになり、明治大正には日本有数の家具産地へと発展。

 戦後になると洋風家具の生産で名を馳せることに。
 その出発点こそが昭和26年頃に生まれたウィンザーチェア。
 しかしそこには苦難の道のりがありました。
 そのことを物語る場所が今も残されています。

 所狭しと並ぶのは、海外から取り寄せられた古いウインザーチェアーの数々。
 その数40。18世紀に作られた銘品がいくつも含まれます。
 それらは一人の人物の手によって集められました。

 「これは先代の池田三四郎。私の祖父なのですか、創業者の池田三四郎が集めてくれたのです」

 池田三四郎さん。もともと松本で木材業を営んでいた三四郎さんは戦後の混乱の中、これからの日本の生活を豊かにするものをと、洋家具作りに情熱を傾けました。
 三四郎さんが真っ先に手本としたのがウィンザーチェア。
 数百年の伝統の中手仕事が作り上げた美しい形と使いやすさに心を打たれたのです。

 「庶民の人たちが暮らしの中で実直にやっぱり作り続けてきたんですよね。でそれがそのコピーにコピーを繰り返されていきながらどんどん良くなっていってそれでいつしかみんなが愛しスイスになった。ウィンザーチェアを勉強することが本物の椅子を作るのに一番の近道じゃないかって考えたんです」

 松本のウインザーチェアーづくりの拠点として三四郎さんが立てたのがこの館。
 戦後の混乱期に職を失っていた和家具職人を集めてウィンザーチェアを実際に使いながら作り方を探ります。

 しかし和家具と洋家具では作り方は全く異なります。
 すぐに大きな壁にぶつかることになりました。
 それが背もたれやアームの部分。当時の松本では1本の木を曲げる技術が確立されていなかったため大きなカーブを再現できなかったのです。
 それでも自分たちのウィンザーチェアを作ろうと、健闘した職人たち。

 試作品を見るとホゾでつくり出す指物という枠組みを要して難局を乗り切ろうとしたことがわかります。
 その後研究を重ねて蒸気で木を曲げる技術を習得。
 製品化に成功し松本の木工の新たな歴史が始まりました。
 椅子が未来を切り開く。情熱は受け継がれ今も松本で多くの職人が独自の椅子づくりに取り組んでいます。

 子どもたちに優しい椅子

 今こちらのお宅で利用している話題の椅子を拝見。

 それが子供用の椅子。
 三姉妹みんなが大のお気に入り。
 まだ一歳のかえでちゃんでも楽々をかけるほど。
 「おうちごっこのとかで乗り物になったり踏み台みたいにしてみても倒れなかったりして物取ったりとか」

 多少乱暴に使っても倒れない安定性。雑誌でも取り上げられ、お母さんたちの注目を集める人気の椅子なんです。

 藤牧敬三さんは、松本で修行した後独立。この道28年。
 子供椅子を作り始めたのは5年前。
 友人に頼まれたことがきっかけでした。
 作業はアーム作りから始まります。

 家具工房スタイル・ガレ u-chair

 材料は誰タモ。粘りがあって丈夫な木です。

 4 mm 幅にスライスし、接着剤をつけたら7枚重ねて貼り合わせます。すると厚さ2.8センチの角材状に。

 この後曲げて行くんですが
 「徐々に曲げていきます」

 重ねた際に圧力をかけて曲げる。このやり方の方が思い通りのカーブが作れるんだそう。
 目指すのは子供を優しく抱くなかなかなU字。
 ヒビが入らないよう慎重に締めていきます。
 始めてから30分。曲木作業が終了。

 乾燥させて削りを施すとこの通り。
 アームに足などのパーツを差し込んで椅子の形にしていきます。

 足はわずかに角度をつけて組んでいきます。
 それが多少乱暴に扱っても倒れない安定性のポイント。
 これが組み上がった状態。
 わずかですが足がハの字に開いています。

 前足は8度。後ろ足は13度。長年かけて藤牧さんが見つけ出した子供に優しい角度です。

 「負荷をかけても音が全くない」

 オイルを塗ったら最後は座面づくり。

 「こちらが椅子の座面の素材になるペーパーコード・紙紐になります」

 樹脂を含ませて撚った紙紐。これが椅子の秘密。

 長い紙紐を切らずにそのまま編んでいきます。

 「弛まずに保ちながら雲ます。100 M ぐらいひとつ使ってしまいますね」

 これを繰り返すと網目が対角線上にできます。渾身の力で編む藤巻さん。

 3時間続けると丈夫でスタイリッシュな座面が現れてきました。

 ついに完成。

 子供はもちろん大人の女性が座っても大丈夫な強さを持っています。

 紙紐の座面は使うほどにお尻の形にフィットしたくぼみができるので、座り心地が良くなっていくんだそう。

 「子供にとって居心地のいい椅子。作ってる時はもうもう無心に近い状態で作ってるんですけども、すごくやりがいがある仕事だと思っています」

 子供達がいつも笑顔で使ってくれますように職人の愛情とは誰の詰まった逸品です。

 椅子は美しく心地よいものでなければならない。 

 オーダーメイド家具工房スタイル・ガレ 信州長野の小さな家具工房から手作りの家具をお届けします

 先人が掲げた理想は松本の地で、揺らぐことなく職人たちの心に流れ続けています。

*https://aerith.xyz/?p=6021 より


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