鄭大世(チョン・テセ)選手がアルビに入団した時に、「そういえば以前に安英学(アン・ヨンハ)と鄭大世(チョン・テセ)について書かれたサッカー本があったよな?」と、記憶が蘇りました。
ネットで検索すると、それは「橋を架ける者たち~在日サッカー選手の群像~」という書籍で、表紙には元アルビの安英学選手と、現アルビの鄭大世選手、それに仙台のレジェンド(現サガン鳥栖)梁勇基(リャン・ヨンギ)選手の3選手の写真が使われていました。この3選手は、ワールドカップ南アフリカ大会(2010年)に、北朝鮮代表として出場(リャン・ヨンギは帯同)しています。
「鄭大世もアルビに来たし、安英学も懐かしいなぁ…」「こりゃぁアルビサポとしては読んでおきたいよな…」「よし、夏の自由研究(※1・※2)の最終版だ!」ってことで数日前にamazonの中古本を購入したしだいです。50円(送料別)で買えちゃいました。
筆者の木村元彦さんはスポーツノンフィクションライターで、「オシムの言葉」や「争うは本意ならねど」(我那覇のドーピング冤罪事件を扱ったノンフィクション)などその著作の何冊かをボクも読んでいますが、緻密な取材に基づいた論理的な文章を書かれる方です。今回も期待に違わぬ衝撃と感動をボクに与えてくれました。
この本は、アルビファンやサッカーファンだけでなく、全日本人に読んでほしい内容の本です。ボクはこの本を読むことで、今まで知らなかったことを知り、今までボンヤリとしか感じていなかったあるできごとの本質を、クリアに理解することができました。
わがアルビレックスについての記述も、安英学について書かれているページに何度も登場していました。
中でも池田弘さんの次の言葉は、強烈に記憶に残りました。
これまで日本の人々は、おらが会社という意識は持っていたけれど、おれが地域という意識はあまりなかった。スポーツにおいても、あったのはせいぜい甲子園に出た地元高校を応援する気持ちくらいでした。明治時代から中央集権であったから、そういう国家論理だったんです。
大企業が顧客のロイヤリティー構築や宣伝のために、もしくは人材育成のための手段としてスポーツを推進していたのですが、バブル経済がはじけて終身雇用が崩壊した。企業スポーツではなく、住民が支えるスポーツへの転換が必要だった。そんなときに私たちは草の根から地域の支持を得て、新潟という愛郷心を持つクラブ作りに成功したのです。(池田氏ここまで)
偏狭なナショナリズムを解体するのが、この愛郷心ではないだろうか。国籍、民族にかかわらず、その地域に暮らす人々が郷土におけるアイデンティティーを共有する。(引用ここまで)
また、北朝鮮による拉致問題に関連したアルビサポについての次の記述は、とても誇らしいものでした。
新潟ではかつて、小泉首相の訪朝時に北朝鮮政府が拉致を認めたために、北朝鮮代表でプレーするヨンハへの風当たりが強くなったこともある。しかし、先述した通り練習場で「君と拉致問題は何の関係も無い。僕たちはこれからもアルビのサッカー選手としての安英学を応援するよ」と告げたサポーターがいた。(引用ここまで)
本書は朝鮮高校蹴球部出身の3人のスーパープレーヤーたちの物語を紡ぎながら、彼らを取り巻く日本社会、そして世界の今を描き出しています。そして「サッカーで差別を乗り越える」という大きなテーマに迫る、著者・木村元彦氏の渾身の一冊です。
中でも、Jリーグサポーターでは有名な「浦和の『ジャパニーズオンリー』ダンマク事件」について書かれた章や、FIFA(国際サッカー連盟)に加盟承認されない国や地域のサッカープレーヤーのために組織されたCINIFAが開催する、ワールドフットボールカップに出場したFC-KOREAについて書かれた章は、必見です。多くの皆さんからぜひ読んでいただきたいと思いました。
先週末に実施された磐田戦のゲーム前に行われた、大井&堀米の両チームキャプテンによる「リスペクト宣言」。このJリーグで定期的に行われるセレモニー実施の背景にも、この本に書かれていた内容を含む歴史的な大きな問題があるのだということを、痛感させられました。
ボクらは目を背けてはいけませんね。皆さんも、ぜひ読んでみてください。
さてさて、今日はアウェイ千葉戦です。アルビは前節の磐田戦の敗戦から巻き返すことができるか?ぜひ頑張ってほしいです。DAZNを見ながらしっかり応援したいと思います。新潟日報の先発予想はこんな感じ。
中島、福田、荻原の移籍3選手が先発予想に名を連ねました。テセは後半に交代で出場かな?
そしてスポーツ欄にはこんな記事も。
スポーツ観戦の観客数制限は、まずは「収容人員の30%」レベルまで緩和し、「2万人」へ移行することを政府に要望したとの報道でした。ビッグスワンの収容を約4万人とすると、まずは1万2000人まで観客を入れるということですね。ようやくシーズンパスで観戦できる日がやってくるようです。とりあえず、ヨカッタ、ヨカッタ。絶対にスタジアムからコロナ感染を出さないように、みんなで最大の注意をしましょう。