コチシュはピアニストだけではなく、指揮者として、作曲家として、編曲家として、幅広い才能を発揮した音楽家です。
ハンガリーの国立オケの総監督になった時に、団員をオーディションし直してレベルアップしたり、新たなオーケストラを創設したりといったこともしたそうで。
ハンガリー三羽烏として存在は知っていましたが、積極的に聴いてきたわけではなく、以前読んだ「遊藝黒白」にコチシュのことが書いてあり、才能あるピアニストとして名前が何度か挙がっていました。
聴いてみると、音が澄んでいて綺麗で、グイグイ突き進む音楽で、強い人という印象。
それ以来、久し振りに聴いてみました。
いくつか聴いておりましたら、音のキレとリズムのキレが素晴らしく、このようなタイプの演奏は積極的に聴くことはなかったので、今頃コチシュって凄かったんだと驚いています。
それから変な話ですが、ピアニストの中でこんなにスケールとアルペジォが美しく上手い人は、私の中ではちょっと聴いたことがないです。
そりゃプロですので、ピアニストは皆当たり前に上手いのですが、この人のはこれだけで耳を奪われるものがあります。
一生で1分だけでも良いので、このテクニックを味わってみたいです。
こちらの曲、どのピアニストが弾いても大変そう、との印象しかない曲でしたが、コチシュの演奏で初めて音楽として成立しているものを聴きました。
彼の頭の中はオーケストラなんだろうと思います。
速めのテンポでさっさか弾いている演奏が多めですが、モーツァルトの緩徐楽章は一音の表現にうならされます。
Zoltan Kocsis plays Franz Liszt: Reminiscenses de Norma de Bellini