東京芸術劇場に、阪田知樹さんと高木竜馬さんのコンサートを聴きに行ってきました。
リストとタールベルクの「象牙の戦い」と呼ばれるピアノ対決が1837年にあったそうで、2人の作品を阪田さんと高木さんで対決風に演奏する面白い企画です。
プログラムはこちら
プログラムノートは、高坂はる香さん。阪田さんからの情報も盛り込まれ面白い内容です。
リストとタールベルクの生きたロマン派の時代の一瞬を切り取って再現するコンサート。(阪田さん)
19世紀のパリのサロンにタイムスリップする時間となりそうだ。(高坂さん)
前半で演奏された、2人の作曲家がオペラをトランスクリプションした作品。
阪田さんによると、タールベルクは古典的な手法を踏襲し続け、リストはそれまでにあった超絶技巧のテクニックを吸収した上で、全く違うものを作り出した、と。
並べて聴くと、どれほど違うかよくわかります。
タールベルクはピアノを大きな音で厚みのある和音で鳴らしたり、音数勝負とばかりに細かい音符を散りばめているものの、パターンは決まっています。
それに対しリストは別次元。
リスト自身が編曲はいかにも私向き、と言っていただけあり、単純に演奏テクニックだけ聴いても複雑。音楽はオペラの場面がいくつも表現されているのか描写が豊か。
作品を聞いていて、リストが演奏テクニックだけで人々を圧倒していたのではない事が分かります。
最後の曲、「2台ピアノのための悲愴協奏曲」
ソナタやバラード2番と同時期の作品で、ソナタのあの部分に似ているとか、バラードのあのゆっくりした所にそっくりとか面白く聴けました。
この曲は元々パリ音楽院のコンクールのために書かれたソロ作品。それを10年以上経ってから2台ピアノに編曲したのだそうです。
リストに2台ピアノの作品があるとは知りませんでした。
ヴィルトゥオーゾ同士で演奏しないとグダグダになってしまいそう・・
名手のお2人でしたので、見事でした。
音質が異なるようでいて反発はしないので、2台で演奏されている面白さがしっかりとありました。
阪田さんは今日は丈の長い装い。
最初にステージに出ていらした時に、「おっ、リストだ」と思いました。最近は髪もリストヘアっぽいので、今日のプログラムにピッタリ。
前半の最後に弾かれた「ノルマの回想」
最後に向かうに従い、楽しそうな様子。
袖に引っ込まれるときの足取りが軽やかで、そのままスキップしそうでした。
いっそ、スキップしてほしかった。
高木さんは「どうも、どうも」という感じで袖に引っ込まれ、カーテンコールも「どうも、どうも」という感じで出て来られ、なんだか面白そうなお方でした。
マニアックな阪田さんのような方が日本で活動されていると、滅多に聴けない、そして一生に一度しか聴けないかもしれない曲が聴けるので、貴重な経験ができます。
気付けば、コンサートのプログラムがメジャーな曲を並べる時代から先に進んだのだ、知らない曲ばかりでもこんなにお客さんが入るのだ、と若いアーティストたちの活躍を喜ばしく思うのでした。
バルトークとドホナーニの「悲愴協奏曲」
音質はよくありませんが、この2人の演奏があるとは驚き。