朝もまだ明けきらない 午前5時過ぎ。
リオデジャネイロからガナバラ湾を隔てた 対岸の街サンゴンサーロ市のバスターミナルに一台のバスが出発を待っていました。
バスにはリオデジャネイロ側に働きに行く人たちが、すでに乗り込んでいました。
ターミナルを出発したバスには、各バス停に止まるたびに乗客が乗り込んできます。
対岸側最後のバス停で乗り込んできた青年は、20レアル札を出してバス代を払うと、お釣りを受け取り 座席に腰を下ろしました。
青年が乗り込んで間もなく、バスはガナバラ湾にかかる二テロイ橋にさしかかりました。
全長13,3㎞ほどの二テロイ橋はリオデジャネイロと対岸を結ぶ大切な交通路で、朝はたくさんの通勤の車で混み合います。
橋に入って間もなく 午前6時少し前、先ほどの青年が突然立ち上がり運転手にバスを止めるよう言いました。
乗客たちは「ああ、いつもの強盗だ」と自分たちの持ち物を差し出す準備をしました。
しかし 青年は乗客たちに落ち着いて話をします。
「このバスをジャックする。しかし あなた方の物を奪おうとも思わないし、あなた方に怪我をさせるつもりもない。」
そして 車内にガソリンの入ったペットボトルを吊り下げ 火をつけると言いました。
その時、バスの中には37名の乗客がいました。
青年は窓ガラスにスプレーペンキでメッセージを書き始めました。
知らせを受けて緊急配備を敷いた警察はすぐに犯人との交渉を開始。
午前8時までに 気分が悪くなったり体調が悪くなった 4人の女性と2人の男性が解放されました。
バスジャックが起こってから3時間が過ぎたころ、青年はバスを降り 上着とリュックを警察に向かって放り投げました。
その時...
5発の銃声が響き、バスに乗り込もうとした青年が崩れ落ちました。
青年を撃ったのは 警察の特殊部隊。
彼らは周囲何ヶ所かに配置され、狙撃のチャンスをうかがっていました。
発生から約3時間半で事件はバスジャック事件は解決となりました。
青年の要求は3万レアイス(約70万円)ほど。
青年がどうして事件を起こしたのか、本当の原因はお金とは別なところにあるのではないかと、あらためて調査されるようです。
約3時間半にわたって交通の要所が閉鎖された影響は大きく、渋滞は114㎞にまで達したということです。