以前どこかで聞いた事があるのですが,イギリスの近代文学にはある『形式』というものがあって,大抵の小説はその形式に則って書かれているのだそうです。それが具体的にどういう事なのか,英米文学の専門家ではない私には,もちろん,さっぱりわかりません(笑)が,今まで読んできた本には,確かに,共通点があります。
- 過去形で話を進める
- セリフ以外の所に話し言葉を使わない
- たとえセリフにでも,スラングを乱用しない
- 文法的にきっちり正しい表現をする
- 論理的に話を進める
- ある一定のボキャブラリ(対象読者のレベルに合った)を使って表現している
- 読者の立場に立って話を進める
この法則は,不思議の国のアリスから,指輪物語,ナルニア,The Odyssey(翻訳),Animal Farm(動物農場),ハリポタ,に至るまで,全て当てはまり,おかげさまで,これらの本はノンネイティブにとっては,易しいとは限らないけれど,読み易い本と言えます。
これに対して,どうもアメリカ人は型にはまるのがニガテ? To Kill a Mockingbird(アラバマ物語)と,One Flew over the Cuckoo's Nest(カッコーの巣の上で)は,この法則を無視していて(特に『読者の立場』を全く無視),ノンネイティブにとっては非常に読み難い小説です。ファンタジーに関しては,論理的でなければならないので,完全無視という事はさすがにありませんが,アメリカファンタジーのゲド戦記にEragon,は,イギリスファンタジーに比べたら,やっぱり,ちょっと読み難いです。
ただ,『カッコー』のような,非論理的な事が平気で起きる小説を読むというのは,勝手に話を想像してわからない所をごまかす事ができませんので,リーディングのスキルを鍛えるには,逆にいいのかなあと思います。これを読み終わったら,ゲド戦記を読む予定にしていますが,あの読み難いファンタジーを読む為にはよい訓練になるのかも??