ふむ道,小道,数多く

趣味いろいろ。2014/9に別ブログを合体したので、渾然一体となってしまいました(笑)

カッコーの巣の上で

2006-01-29 14:11:05 | 映画
まだ1/4しか読んでないのですが,別ブログで原作読書感想アップ中の本の映画をDVDで鑑賞しました。

この映画は,1975年のアカデミー賞で9部門ノミネートされ,5部門を獲得したそうです。ROTK等は11部門獲得しましたが,この映画はその半分の5部門と言っても,作品賞,監督賞,主演男優賞,主演女優賞,脚本賞,‥と,重要な賞ばかり取っています。実質的には,本当に素晴らしい映画という事なのでしょう。

これは余談ですが,この映画は,音楽も素晴らしいのに,何故作曲賞を取れなかったんだろうと思ったら,それを受賞したのは「ジョーズ」でした。そりゃしょーがないわ!(笑)

それにしても,優れた原作の映画化,という点に於いては,LOTRと共通ですね。また,それ以前はそれほど有名でなく,この映画で知名度がぐんと上がったというキャストがいるという点も共通ではないかと思います。

30年も前の有名な映画ですので,今更言ってもしょうがないのですが,ネタバレ注意,でございます。(笑)

主なキャラクタを演じた俳優さんからチェックしてみると,‥

McMurphyを演じたジャック・ニコルソン。もちろん今や押しも押されぬ大御所ですが,ハンサムというイメージではなかった? 私は映画を観るまで顔すら忘れてましたが(汗),でもこの映画のMcMurphyは原作通りの「いい男」でした。ハンサムというイメージがなくても,一流の俳優は見栄えを合わせてくるもんだなあと思いました。(笑)

仮病で入院してきた彼は,他の患者がもう既に疑問を持たないような,いろいろな「変な習慣」に,普通に疑問を持つのですが,その表情がカッコいいです。ある時は正攻法で,またある時は奇想天外な方法で,いろいろ改革を試みるのですが,ついに病院を見捨てて逃亡を図ろうとします。一緒に行こう,と,声を掛けるのですが,これに応えたのは,小説の語り手であるChiefと,McMurphyの連れの女性に一目惚れした吃音障害を持つ若い患者Billy Bibbitだけ。

今まさに出て行こうとする時,残していく患者を見ている表情がまた感慨深いものでした。でも,彼は結局,Billy Bibbitに時間を与えた為に逃げ損なってしまいます。そして,彼が,Billyにかけた気遣いを,完全無視したRatched看護婦に,溜まりに溜まった怒りをぶつけてしまいます。

問題のRatched看護婦を演じたのは,ルイーズ・フレッチャーという,現在も現役で活躍する女優さんです。原作では50才前後だけどグラマーで「well-preserved」(笑)な美人看護婦というキャラクタでした。さすがに当時50才ではなかったようですが(笑)年の割りに若く見えるきれいな女優さんです。また,看護婦のキャップが似合う方で,その後も看護婦さんを演じた事があったようですね。映画で驚いたのは,McMurphyに首を絞められた後,首に包帯を巻いてすぐに業務に復帰していた事です。

IMDBでキャストをチェックしたら,ぶったまげました。Billy Bibbitを演じたのは,ななんと当時新人のブラッド・ドゥーリフでした! 名前から「Hobbit」を連想してしまいます(笑)が,この病院でも皆から可愛がられる存在なんですね。McMurphyが逃亡を図った日に,彼が連れてきた女性に恋をした事をためらいがちに告白し,彼の許可をもらって彼女と一夜を共にして,一瞬まともさを取り戻すのですが,それは病院内の事。当然,Ratched看護婦に叱られ,お母さんに言いつけるという言葉に逆上,ひどく狼狽し,悲惨な末路を辿ってしまいます。この一連の「McMurphyの禍」(←LOTR風(笑))となる行為の演技が,本当に素晴らしく,完全に場をかっさらってしまいます。

もしアカデミー賞に「新人賞」があれば,きっと取れたでしょうにと思ったら,この演技で,ゴールデン・グローブ賞の新人賞を取っていました。でも,元々舞台俳優だった彼は,その光栄にも,もちろんその後LOTR等での高い評価にも溺れる事無く,地道に活動していますね。

指輪キャストが出ていると知り,急に力が入って参りました。(笑) 

‥McMurphyを待っていたのは「ロボトミー」でした。しかし,McMurphyの行動に勇気付けられ,喋る能力を取り戻した語り手のChiefは,McMurphyに「君をこんな姿のままで置いていけない,一緒に連れていくよ。」と言って,彼を「連れて」病院を脱走して行きます。窓を割って走り去るChiefの後姿を,声にならない「ブラボー!」で見送っていたのは‥‥誰?! Harding? (すみません,キャストとキャラクタの顔が一致してない。。)

ところで,Chiefは小説上では混血ですが,演じた俳優さんはWill Sampsonという,クリーク族というネイティブの一員で,実際身長も原作のChiefのように2mあったそうです。どこかで見た顔だなあと思っていたら,この映画以降に,いろいろな所で「チーフ」を演じていたようです。ただ,残念な事に,1987年に53才の若さで亡くなったそうです。

‥で,まだ原作の方は1/4しか読んでいないのですが,この話にはいろいろな「テーマ」がありそうです。本の方はまた楽しみに読んでいくとします。

それにしても,いかに優れた映画と言っても,やっぱり原作には到底かなわないというのは,既にこの時点でわかります。映画では語られていなかった伏線もあるし,個々の患者についての説明もいろいろあるし,そうそう,原作では重要な役割を果たしているHardingが,映画ではあまり目立っていませんでしたね。また,Ratched看護婦のどこに問題があるのか,もっときちんと説明されています。(映画だけを見ると,単なる嫌なオバサン程度に見られてしまいそうなんですけどね)

Run!Run!Run!