憧憬、大艦巨砲主義w

メイン盆栽HAWK11 営農機セロー250 奥様号レブル250

月夜の経験(その後)。

2006-04-13 23:42:50 | 俺だよ、オレ。
現実は映画や、TVドラマや、物語のようにはいかない。

青春時代(うわ!この表現、赤面しちゃうっ!)を消費して、延べ7年間、某格闘技に取り組んだ。取り組んだ、と言うより没頭した、といっていいだろう。苦しい反復練習に耐え、痛い組み手や、関節の故障に苦しみ、自分に何が残ったのか、今でも疑問に感じる時がある。

人体を破壊する能力以外に、何があるのだろうか。
武道において礼や、品格が重んじられるのは、その活動そのものが暴力であるからに他ならない。
ハッキリしているのは、この能力を発揮した事で、自分も含めて複数の人間が極めて不愉快な思い(痛い思い)をしたことだ。

反面、もう1つ、ある。

自分が同意していない領域で何らかの抑圧を受ける、と言うできごとは、深い怨嗟を残すと言うことだ。例えば、自分の上位者(上司や、大事な取引先など)以外から譴責を受けるのは納得がいかないし、何日もハラが立っていたりする。道場での組み手ではなくて、誰かに回し蹴りを食らったり、乳を揉まれたり、恫喝によって金品を強奪されたりしたら、それこそ、一生忘れない、みじめな心のキズになると思う。

その抑圧が、自分(も含めて)の次に、誰か他人に及ぶ可能性がある時、その可能性を自分が抑止できるのなら。
そのために何かできるのなら。
多分、善意の誰もが、何かをすることに、賛同することと思う。



願わくば、誰もが、自らの弱い意志によって、その怨嗟の起点に立つことのありませぬように。



実は、このハナシ、ココで終わりにならない。
コレについては何も書けないが、数年後、彼らのうち1人と、お互いにとって全く意外なところで再会することに!
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月夜の経験(後編)。

2006-04-13 00:48:35 | 俺だよ、オレ。
足を止め、オレは、彼らの正面に向き直った。

オレが足を止め、対峙したことは彼らにとって意外な出来事だったようだ。
弛緩しきっていた彼らのムードが、一気に張りつめた。それは、こちらにまで伝わってきた。
二呼吸ほどの沈黙。向かって右側の二人が立ち上がった。

足元を見ると、陸橋の陰になっている暗がりに、転がった缶は350のビールだった。広がる液体と、鈍いアルミの反射が見て取れた。

立ち上がったどちらかが言う。「オマエなめてんのか」声の主は、明らかに思春期の少年だ。
立ち上がった右端は、オレから見れば、まだ、子供の領域だ。左側はオレと似たような背格好だが、コチラも右側と年齢は、変わらないだろう。残る一人は座ったままコチラを見ている。こいつはこの2人より格上のようだ。

なんと言うことだ。本当にこんなことがあるのだ。

彼らは、力弱き者たちを見下げ、その恐怖を享受する行為をレクリェーションにしているのだ。
嘆きたい気持ちの反面、彼らを許してなるものか、という衝動が抑えきれなくなってくる。オレがここでやらねば、誰かが、平和な家庭人が、オレの父や母のような人が、ココで彼らにヤられるかもしれないのだ。

相手の力量・装備が不明の場合、たとえ1on1でも格闘は避けなければならない。
このテの暴力にはルールも、見守る人もなく、最悪の結末は、どちらにも訪れる可能性が否定できないからだ。
また、相手の力量が解っていて、ルールのある場合でも1on2は敗北の危険が高い。
ましてや、1on3だ。1人でも、オレの力量に近いヤツがいれば、完全に敗北する。結論として、ココは通常なら逃げの一手に限る。
格闘の達人であっても、勝利するには、運が必要な領域だ。
オレは恐怖を感じた。

TVや映画のように、複数を相手に対等に格闘できるものでは、断じて、ない。
相手も必死で、側方や、背後からも打ち付けてくることができるのだ。そして、それは、自分の死や、障害者となるかも知れない、と言う恐怖に他ならない。

しかし、オレの父や母のような人が、ココで彼らにヤられるかもしれない、と思った瞬間に、彼らを放置することは、オレにはできない行為になっていた。

2人はこちらに向かって歩いてくる。どちらかが、恫喝する。「オマエ、ヤっちまうぞ」。もう1人はまだ、座っている。
間合いが3Mくらいになるまでの、4~5秒で意は決した。

今、この機会に、彼ら自身と、公共の利益のために、彼らを、オレが、処断する。

全ての感覚を動員し、神経のアジャスターを思い切り締め上げる。後は、過去に自分が積み上げてきた鍛錬を信頼し、解放するだけだ。
不本意だが、先制攻撃とする。やむをえない。彼我兵力差は3:1なのだ。彼らには武装もあるかも知れない。

左側のヤツに向かって走るように数歩詰め、左側のヤツが防御体制をとる刹那、1M脇の右側のヤツの胸部に右後蹴りを押し込む!胸部を狙った右踵は彼の胃部に差し込まれ、柔らかい感触が伝わる。体重差によってしりもちをつくような格好で後方に押し出される彼を確認しつつ、蹴り込んだ足なりに歩足をとり、左側のヤツのサイドを取る。

左側のヤツは、明らかに狼狽していた。オレの行動が予想と違っていたのだろう。
座っていたやつも、立ち上がるのが視界に入る。

だが、左側のヤツも全くの、シロウトだ。
つかもうとする左手をそのまま無視して、彼の左足膝関節の後外側から右のローキックを打ち込む!右足の甲に膝関節の外側の筋が当たり、急所にヒットした感触を感じる。
折れ込む左足から、両手で彼の髪を両手で力いっぱい掴み、鼻っ面に渾身の左ひざを入れる。

しりもちをついたと思った右側のやつは思ったより遠くにいた。半身を地面に向けて嘔吐している。内臓が破裂していなければいいが、と少し思った。
左ひざを顔面に打ち込まれたヤツは背中を丸めるように地面を向き、嗚咽を漏らしている。双方とも戦意は消失したようだ。

ツーステップで残りのヤツとの間合いは詰まった。約2Mの間合いで彼も明らかに少年であることに気付いた。高校生か、ひょっとしたら中学生かも知れないと思った。良かった、武装はないようだ。

思った瞬間、彼はツーステップで右のハイキックを打ち込んできた。この時点から、オレには大きな余裕ができた。明らかに自分より体格が優っている相手に、いくら得意でも振りの大きい、しかも牽制なしの先制攻撃は禁忌だ。
重心を先方に移動しつつ、左の上段受けを左上方に押し上げながら、右足で、彼の軸足を刈る。
左手で、受身を取りながら彼は仰向けにひっくり返った。彼の左足の膝の側に渾身のケリを入れる。しばらくは立てないはずだ。
受身を取った時に左のひじをアスファルトに打ちつけたようで、足よりも、左腕を押さえていた。

後の2人は先ほどのままだ。

顔を見られたくないので、背をむけつつ、言った。「今度、ここにいたら殺すぞ。・・・仲間、ちゃんと助けてやれ。」彼らに発した言葉は後にも先にもコレだけだった。決断してから数十秒程度の出来事だったように思う。

この場を逃げ出すために、走りだしたいキモチを抑えながら、オレは再び、早足で月光の下に出た。二つ先の曲がり角を歩いて左に曲がり、尾けられていないことを確認し、オレは走り出した。

ヤバイ。
頭がさめるに従って後悔した。
嘔吐の彼、内臓破裂していたらやばい。膝の彼も、正中に思いっきり膝を打ち込んだし、ずっと同じポーズでうずくまってたし、最悪、頭蓋割れる(映画:ラスト・ボ-イスカウト参照)ことあるってゆーし。
最後の彼だって、しこたまヒジをアスファルトにぶつけてたし、骨折しているかも。
しかも中学生だったりしたら、ただのケンカでは済まない。登録していないだけで、オレは、かつて、初段の人には負けない自信があったのだから、最悪、あいつらがケガで済んだとしても、被害届けが保護者から出たりしたら、即、逮捕だ。死んだりしたら、傷害致死ではすまない。未必の故意が適用されて、殺人だ。
お仕置き、というレベルを明らかに超えている。しかも先制攻撃では、正当防衛も怪しい。
ヤバイ。
まじめなサラリーマンなオレなのに。こんなんで逮捕されて、有罪になったりしたら父母はなんて悲しむだろう。全精力と多大な経済的負担をもって口説き落とした彼女も、きっと、去っていくだろう。会社も懲戒解雇だ。民事もヤバイ。社会人としての全てを失うコトは明白だ。
ヤバイ。

翌日から不安な日々が続いた。翌日、翌々日その後の新聞にも何も出なかったので多少、安心した。
この事件の呪縛から解放されて不安のない生活に戻るまで、1年以上かかったと思う。

今思えば、ちょっと、ヤられてあげて、保護者に賠償請求するほうが、不安な日々がなくていい結果を得られたはずだし、彼らを膺懲できたと思う。
でも、これは結果論で、その時は、こんなことわからないし。

月夜に、注意。
コメント (3)
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