帰りのロマンスカーは、小田原から何回も止まる電車だった。新松田・本厚木・町田・向ヶ丘遊園と、停車駅はかなり多い。
30分待てば新宿まで止まらない電車があったが、先に出るほうが、いくらかでも早く新宿につく。それに、全席指定だから、他の席で乗り降りがあろうと、こっちの知ったことではない。
電車に乗ったときは、そこそこ席が埋まっていたが、途中で降りる人も多く、空席の割合が多くなっていった。
本厚木か町田で、乗り込んできた客の中に、1人の中年女性がいた。
その女性は、私の前の席に来ると、おもむろにさらにその前の座席を後ろ向きに回転させて、向い合わせの4席ボックス型を作り、前通路側の座席に荷物をのせ、進行方向を向いているほうの座席を微妙な角度に窓側向きに回転させ、その窓側の席に陣取った。
ずいぶんと手馴れた手順に見えた。
女性は、シャケットとスカートというふうなビジネスにも通用するような服装であり、よくは見えないが、旅行ではないような大き目の荷物を持っていたようだった。また、スカーフやバッグなどの小物もあり、お弁当や飲み物もあり、それらの何点かの荷物を4席の座席とテーブルを使って、自分の思うような位置に配置し、靴を脱いで足を前方のシートの上に伸ばしたようである。
これは、前の座席の背もたれの向こう側で行われていることなので、私に見えたわけではないが、おそらくそんな雰囲気であった。
その女性の後ろの席に私の娘、私はその隣の通路側に座っていたのだが、その女性は、いきなり私の前のシートをリクライニングさせた。私たちの前のシートは微妙に窓向きに回転しており、リクライニングされ、妙に落ち着かない位置に停止した状態となった。
それから女性は、テーブルの上のお弁当と飲み物を食し始めたようだった。
この人はかなり忙しく、一仕事終えて帰るところのようでもあり、疲れているようで、電車の中で一段落というふうである。
それにしても、全席指定の電車のシートを4席自分のものにするという使い方はなかなかできるものではない。よほど、ロマンスカーを使い慣れていると思える。
確かに、向ヶ丘遊園などから新宿まで特急ロマンスカーに乗るような人はいないだろう。箱根から来たこの電車がいくつかの駅で止まるのは、大部分は降りる人のためのようだ。
電車が発車したあと、程なくして、乗務員がやってきて、この女性に話しかけ、特急料金を徴収していた。女性はなんら動じるふうもなく、当然のように手馴れた態度で切符を買っていた。
本来、あらかじめ特急指定席の切符を買わなければ乗れないロマンスカーではあるが、空席がある場合は乗ってから切符を買うことも可能なのだった。
そして、女性は食べ物を食べ始めたばかりだったが、携帯電話に着信が入り、電話を持ってデッキに出て行き「お疲れ様です」と応答している。それから、5分以上も話し続けている。雑談ではなく、仕事の打ち合わせのような表情である。
その間に、車内販売員の女の子が通路を通りかかると、おやっと私のところで反応し、「前の席が曲がっているので直しますね」と私に断って、前の座席の斜めに回転しているのを直して行った。
ああ、やっぱり変な位置になっていたんだ、と納得。もしかしたら、窓方向ななめ向きとか進行方向に真っ直ぐ向きとか、いろんな形に自由にシートが動くのかと思っていたのだが、やはりそうではなく、回転させる途中の中途半端な位置になっていたようだった。
新型のVSEなどは、すべての座席がもともと微妙に窓側を向いているようだが、この車両はそういう設定はないわけである。
女性は、自分が動かした座席が元に戻っているのに気がついたか気がつかないかわからないが、電話を終えて戻ってくると、弁当の続きを食べ、終わると今度は自分の座席をリクライニングさせてリラックスしているようだった。
いろんな人がいるものである。
通路を挟んで反対側には、二人連れの親父が、酒のつまみを広げながら、お互いにつまみを交換して楽しげに飲み食いしていた。
新宿着、20時49分のロマンスカーだった。
30分待てば新宿まで止まらない電車があったが、先に出るほうが、いくらかでも早く新宿につく。それに、全席指定だから、他の席で乗り降りがあろうと、こっちの知ったことではない。
電車に乗ったときは、そこそこ席が埋まっていたが、途中で降りる人も多く、空席の割合が多くなっていった。
本厚木か町田で、乗り込んできた客の中に、1人の中年女性がいた。
その女性は、私の前の席に来ると、おもむろにさらにその前の座席を後ろ向きに回転させて、向い合わせの4席ボックス型を作り、前通路側の座席に荷物をのせ、進行方向を向いているほうの座席を微妙な角度に窓側向きに回転させ、その窓側の席に陣取った。
ずいぶんと手馴れた手順に見えた。
女性は、シャケットとスカートというふうなビジネスにも通用するような服装であり、よくは見えないが、旅行ではないような大き目の荷物を持っていたようだった。また、スカーフやバッグなどの小物もあり、お弁当や飲み物もあり、それらの何点かの荷物を4席の座席とテーブルを使って、自分の思うような位置に配置し、靴を脱いで足を前方のシートの上に伸ばしたようである。
これは、前の座席の背もたれの向こう側で行われていることなので、私に見えたわけではないが、おそらくそんな雰囲気であった。
その女性の後ろの席に私の娘、私はその隣の通路側に座っていたのだが、その女性は、いきなり私の前のシートをリクライニングさせた。私たちの前のシートは微妙に窓向きに回転しており、リクライニングされ、妙に落ち着かない位置に停止した状態となった。
それから女性は、テーブルの上のお弁当と飲み物を食し始めたようだった。
この人はかなり忙しく、一仕事終えて帰るところのようでもあり、疲れているようで、電車の中で一段落というふうである。
それにしても、全席指定の電車のシートを4席自分のものにするという使い方はなかなかできるものではない。よほど、ロマンスカーを使い慣れていると思える。
確かに、向ヶ丘遊園などから新宿まで特急ロマンスカーに乗るような人はいないだろう。箱根から来たこの電車がいくつかの駅で止まるのは、大部分は降りる人のためのようだ。
電車が発車したあと、程なくして、乗務員がやってきて、この女性に話しかけ、特急料金を徴収していた。女性はなんら動じるふうもなく、当然のように手馴れた態度で切符を買っていた。
本来、あらかじめ特急指定席の切符を買わなければ乗れないロマンスカーではあるが、空席がある場合は乗ってから切符を買うことも可能なのだった。
そして、女性は食べ物を食べ始めたばかりだったが、携帯電話に着信が入り、電話を持ってデッキに出て行き「お疲れ様です」と応答している。それから、5分以上も話し続けている。雑談ではなく、仕事の打ち合わせのような表情である。
その間に、車内販売員の女の子が通路を通りかかると、おやっと私のところで反応し、「前の席が曲がっているので直しますね」と私に断って、前の座席の斜めに回転しているのを直して行った。
ああ、やっぱり変な位置になっていたんだ、と納得。もしかしたら、窓方向ななめ向きとか進行方向に真っ直ぐ向きとか、いろんな形に自由にシートが動くのかと思っていたのだが、やはりそうではなく、回転させる途中の中途半端な位置になっていたようだった。
新型のVSEなどは、すべての座席がもともと微妙に窓側を向いているようだが、この車両はそういう設定はないわけである。
女性は、自分が動かした座席が元に戻っているのに気がついたか気がつかないかわからないが、電話を終えて戻ってくると、弁当の続きを食べ、終わると今度は自分の座席をリクライニングさせてリラックスしているようだった。
いろんな人がいるものである。
通路を挟んで反対側には、二人連れの親父が、酒のつまみを広げながら、お互いにつまみを交換して楽しげに飲み食いしていた。
新宿着、20時49分のロマンスカーだった。