何も悪いことをしていないのに、警察に呼び止められて、なにかの犯罪にかかわっているのではないかと疑われるのは気分が悪いものです。
職務質問されたことについてのブログを読ませていただいたので、私も自分の体験を思い出しました。
私は昔、放送局のN〇Kの仕事をしていました。
この放送局は受診料取り立てに関して、非常に評判が悪いわけですが、その受信料取り立てのための回し者みたいな仕事、いや、まさしくそのための仕事をしていたのです。
それを「パラボラウォッチャー」または「BSパートナー」と言いました。
(今その仕事があるかどうかは知りません。)
この仕事は、街中の家々をしらみつぶしに見て歩きまして、その屋根の上やベランダ、あるいは窓際などにBSアンテナが設置されていないかどうかを調べる仕事です。
すでに衛星放送受信契約がされていれば問題ないですが、アンテナがあるにも関わらず契約が無い場合は、新規契約を取るリストに入れるべく調査結果を報告するわけです。
だから、引っ越したり家を建てたりするとすぐにN〇Kがやってくるといって驚く人々がいるわけですが、まあ、私のような人間が定期的に地域ごとに調査をしているわけでした。
BSアンテナは南西方向を向いており、CSはBSほど西を向いていないので、方向によってアンテナを見分けます。
集合住宅などは、ベランダを外から見上げてアンテナがあるかどうかを「調査」するわけです。
そうしますと、ベランダには女性の下着などが干してあり、他人が仕事中の私たちを見ると、「怪しい人間」に見えるのです。
私たちは、ぐるぐると建物の周囲を回り、アンテナの位置を確認すると、今度はその家が何号室の誰なのかを照らし合わせるために、郵便ポストや、場合によっては上の階の玄関ドア前まで行って部屋番号と表札を見て、その家が既に衛星契約をしているかどうかを確認します。
この段階では、訪問して契約を取るということはせず、とにかく調査だけをする仕事なのでした。
これもまた、空き巣のように見えるかもしれません。
そんなわけで、このバイトは男子大学生などもやっていて、下着泥棒と間違えられていきなり警察に両脇から捕まえられたなどということもあるそうです。そのため、衛星放送受信機器の調査員という身分証明書のようなものを携帯していて、疑われたときは警察にそれを見せるようにということになっていました。
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私は女なので、下着泥棒に間違われることはないと思うのですが、ある時、ある集合住宅のベランダに設置されたアンテナを見た後に郵便ポストの所に行って、部屋番号・名前と契約者票の記載を照合していたところ、1人の警察がやってきて、何をしているんだと疑いをかけてきたのです。
その人は私服で、そこの住民でしたが、なんとそこは警察の社宅だったのでした。私は見事に疑われ、職務質問をされる羽目になりました。
私は、衛星放送の契約状況を確認しているところですと説明し、ここで放送局の調査員であるという身分証明書を提示したために、事なきを得ました。
まあ、職務質問をされたのは、これ1度きりですが、女性で職務質問をされた人というのも少ないかもしれません。
法律によれば、他人の土地や建物のエントランスなどに、許可なく立ち入っただけでも住居侵入罪になることがあるらしく、普通は通り抜けるぐらいなら見過ごされていると思うのですが、訴えられて有罪になることもあるようです。
あんな変な仕事よくやったなあと思いますが、子供が小学校に行っている自由な時間帯で1日4時間歩き回って新しいアンテナを探すというのは、当時の私にはもってこいの仕事でした。報酬は時給+発見したアンテナ1個につきいくらという形で加算がありました。
アンテナ以外にもケーブルの調査もしました。ケーブルテレビの線をたどっていって引き込まれている家があれば衛星放送を見ることができる状態であるということです。
当時は、ケーブルテレビがまだ普及していない時代で、ちょうど、だんだんケーブルの件数が増えていたので、これもかなり割の良い仕事でした。
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この仕事をして感じたことは、貧しいアパートの人のアンテナはすぐに発見され契約させられてしまいますが、お屋敷や高級マンションでは契約していない人が多かったということです。
1人暮らしの若者が、安っぽい6畳一間のアパートの窓際に小さなBSアンテナを上げていたりしました。そんな家は、すぐに部屋番号と名前もわかってしまいますし、窓際やドア1枚を隔てて住民が在宅しているかどうか、テレビの音なども聴こえてしまいますので、契約するしかありません。
しかし、広い敷地に塀が張り巡らされ、はるか彼方に立派な家が建っており、2世帯住宅でBSアンテナが屋根の上に2つも載っているのに、テレビの受信契約さえしていない家がありました。
もし、訪問したとしても、塀の外のインターホンで断られておしまいでしょう。
また、高級マンションはオートロックになっており、中に入れないため、部屋の並びがわからないので、ベランダにアンテナを上げている家の部屋番号も特定できません。
今では多くがケーブルテレビで、受信するとわかるようなシステムだと思いますが、当時は、こういう立派なマンションの人達に受信契約をしていない家が多く、お金持ちにケチな人が多いんだなあと思ったし、非常に不公平を感じました。
公営住宅や普通のアパートなどでは、勝手に通路まで入っていって、部屋番号も調べられますし、契約も取りやすいですが、オートロックの場合は、とりつくしまもありません。
だから、受信契約や受信料未払い問題というのが、延々と続いていますが、やはり不公平を解消するには、スクランブルをかけてしまうのが良いと思います。
放送を見ているのに受信料を払っていない人が多数いるという状況では、受信料を払っている人たちが、未払いの人の分までもを負担しているということになります。
こんな理不尽なことはありません。
本当に契約をしなければいけない人々がうまく逃れている一方で、実際にテレビを見ていない人から無理やり契約を取ろうとしたりすることが多数発生して、むしろ後者が問題になっています。しかし、実際には前者が問題でしょう。
スクランブルがかかっていれば、こういう問題はなくなるはずです。
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私は、衛星受信設備調査のバイト収入のお陰で、その後それを学費にして勉強もできたので、子供が小さい時の仕事としては、良かったと思っています。
職務質問されたのも人生経験になったかな。
悪いことをしてなくても、犯罪者ではないかと疑われている気分は嫌なもので、警察はやっぱり怖いですね。