ふたたび北野武の話になるが、新作映画のポスターがテレビで紹介されていた。それが、映画内のふたりの人物、ビートたけしと北野武の顔であり、さらにその顔が描かれるための粒子の1つ1つは彼の小さい顔でできている。つまり、微小な顔の集合体がひとつの大きな顔を作るという構成になっているのである。そこまで顔にこだわったかと感心する。
この映画は今まで北野氏が作ってきた映画の総集編だとも本人が言っているようであるが、そこにはやはり58年の人生が刻まれた顔が来るのであろう。人はかならず自分の顔と向き合わなければいけない。
俳優は顔が命。芸能人も顔が命。だから、2枚目俳優や女優は美を追求するが、中高年になって、かっこいいなあ・インパクトがあるなあと思う俳優は単なる美しさではなく、総合的な人間としての迫力・味・魅力を顔が語っている。美を追求したら顔面麻痺の後遺症などはマイナスのはずだが、北野氏の場合も、それは総合的な人間の顔としては何の障害にもなっていないのだ。
男性だからそれができるのかもしれないが、もともと美人でもなく、顔面麻痺の後遺症が残り、若さもなくなってきた現在の私にとっては、自分の目標もそういう総合的な味を目指すしかなくなってきた。
このごろ、自分の顔を鏡に映すのはまったく張り合いがなく、あきらめの境地だ。しみやしわが増えてきて、その老化現象に太刀打ちできない。どんなに化粧をしても目の下のくまは隠せない。また、もともと視力がいいのがわざわいして、早くも老眼になってしまい、老眼鏡を手放せなくなってしまった。おばあさんに突入である。
こうなったら、若く美しい女性路線は不可能だから、変に若作りしても逆効果、中高年なりの雰囲気をかもし出した婦人になるしかない。
私はもともと美容というものに労力をつぎ込めない性格である。だから、洗顔やマッサージや基礎化粧などということがこまめにできない。それで、その結果が肌の老化に現れている。肌の手入れやお化粧に費やすためのお金と時間がないというのも大きな要因でもある。
ドモホルンリンクルのコマーシャルで50代の人がシミもシワもないきれいな顔を披露しているが、ああいう人は一日中自分の顔に注意を向けて、念入りに手入れをしているんだろうと思う。化粧水ひとつつけるのも忘れて寝てしまうような私には、ぜったいに無理だ。
私の顔にシミが多いのは過去に3年間外を歩き回る肉体労働をしていたことも大きな原因である。
子供が小さいころ、学校に行っている間にできる仕事で、ちょうど良かったのだ。肌は紫外線で荒れてしまったが、毎日4時間歩いていたので健康診断の血液検査ではコレステロール・中性脂肪などすべて理想的だと毎回言われた。
ところで、シミはなぜか顔面麻痺になった左側のほうが断然多い。左頬には大きなシミの集団がある。神経が正常でないと血行や代謝が悪くて、メラニン色素がたまってしまうのだろうか。それとも単なる偶然なのかわからない。このシミはレーザー光線で消えるそうであるが、ひとつ消すのに1万円くらいかかるから10万円以上かかりそうだ。実家の母に、お金を出してあげるから治したらどうかと言われたことがあるが、そこまでして直す必要もないだろう。
この間、ひとつの発見をしたのだが、私は眉間に一本だけシワがある。それは右側であり、気がついたときはかなり深く刻まれていた。いつの間に眉間にシワなど・・・と思ったのだが、いろいろ苦労があるから知らないうちについ眉をしかめてしまうこともあるんだろう。きっと眠っている時に険しい表情で寝ていたりして、いつの間にか消えないほどになってしまったにちがいない。45年も生きていると心労が多いのだ。笑いジワならまだしも、眉間のしわを発見したときはショックだった。
ところで、どうして左側にはないのか?普通眉をしかめると眉間には2本のシワができるものだ。しかし、私の場合、左側は顔面麻痺で筋肉の力が右の半分くらいしかないから、眉間にしわをよせる力が弱いのだった。それで、左側だけシワができないという結果が生まれていた。
顔面麻痺が顔の険しさを緩和してくれることもあるんですね。
いずれにしても、女40代、自分の生き方と自分の顔に責任を持たねばならない。