風の数え方

私の身の回りのちょっとした出来事

いかり風、うれし風

2004年12月11日 | 清水ともゑ帳
夕方、ほんの30分ほどの間に、心の中に吹いた風。

最初の風。
散歩がてら出勤する夫を駅まで送った帰りのこと。
下車した人の波の中に、白い杖を持った男性が歩いていた。
周りにいた人たちは、その人が歩きやすくなるよう、少し空間を作りながら進んでいた。
そこへ、女子高生が携帯電話で話をしながら、向かってきた。
そして、すれちがいざまに白い杖の人と激しく肩がぶつかった。
彼女だってかなり衝撃を感じたはずなのに、そのまま電話を耳にあてながら通り過ぎていった。
目の前で起こった光景に私は急いで男性に近づいた。
杖が彼の前にころがっており、そして、他に手にしていた物も散らばっていた。
しゃがんで手探りしながら物を集める彼に、他にも数人の人たちが駆け寄ってきた。
彼は杖と荷物を手にすると、頭を下げながら、再び歩きだした。
私はさっきの女子高生の行方を探したけれど、人ごみにまぎれて見つけられなかった。
誰かと肩がぶつかって謝ることもしなかった彼女に、
ただただ腹立たしく「怒り風」が吹き荒れた。

二つ目の風。
駅を後にしてから、近くのスーパーへ寄った。
レジ待ちをしていると、私の前に子供をおぶったヤングミセスがいた。
彼女がキャッシャーからお釣りを受け取ろうとしたとき、背中の子供が動いたため、
手のひらから小銭がこぼれ落ちてしまった。
ころがっていく小銭を私が止めようとしたとき、彼女が連れていたもう一人の子供の手が
わずかに早く硬貨を受け止めた。
その男の子はうれしそうに、母親に50円玉を差し出した。
それから、私も勘定を済ませ、サッカー台(トリビアで知ったんだけど)で、
自分の買い物袋に品物を詰めた。
すると、さっきのヤングミセスが近寄ってきて、
「先ほどはありがとうございました」と、頭を下げた。
「いいえ、私はなにも…」と言いながら、私も頭を下げた。
彼女の丁寧なそのひと言に、「うれし風」が私の心にほんわか吹いた。
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