まさかプロ・ゴルファーになるとは夢にも考えていなかったーと渡辺邦彦君(26)はいった。小学校の六年生から野球ひとすじに進んできた人が、未知の世界へ転身したものだ。阪神電車の野田社長が、いまの住まい、芦屋カントリー・クラブの理事長をしている関係で、すいせんしてもらったが、「とにかく、ゴルフなんて全然知らなかったので、考えましたけれども、そう深くは悩まずにはいりました」最初はボールが真っすぐに飛ばず、だんだんむずかしくなるのでやっぱり、どんな職業でもプロと名がつけばその道は実にけわしいと彼はつくづく思ったそうだ。高校時代は、米田(阪急のエース)の三年先輩で、境高の一塁手で、四番バッターで活躍したものだ。二十七年の夏に、甲子園の土を踏んだキャリアを持っており、球友には一年下の拝藤(広島の投手)がいる。ノンプロは米子鉄道管理局に四年間、捕手で四番、年間20ゲームで6ホーマーを放つスラッガーだった。高校卒業のときに、スカウトにきた御園生氏の関係で「野球をやるなら一度プロへはいって」と阪神へ入団したのが三十二年。一年間、ファームの三塁手としてやったが、自分の力を知って、プロ野球から足を洗った。「そりゃ、野球をやめるときは、ずいぶん名残りも感じましたが、いまでは、そう野球もやりたいとは思わなくなりましたね。もうゴルファーになってから三年目ですからね」と遠い昔をしのぶ。親友だった鎌田や並木は、いまやタイガースのレギュラーとしてバリバリ働いている。初めのころは、野球とゴルフとは、そう関連性がないと思っていたけれども「最近では、かなり相通じるところがあると考えるようになったんですよ。自分のフォームを分解して研究するところなどは似通っています」と。しかし、野球の場合は、動くタマに対してタイミングを考える。ゴルフは静のマトに向かってふる。動と動、静対動の相違で、野球にはないむずかしさがあって「バッティングのくせで身体が動くので、身体をとめるのにひと苦労でしたよ」という。選手権など正式競技に出場する資格のテストが、ことしから一段ときびしくなったが「来年はパスできると思うんですよ。早く選手権にも出てみたいですからね。これが第一の目標ですよ」と自信のある語り方だ。これからはメンタルなものを身につけることで、まだまだキャリア不足だそうだ。ゴルフの世界で一番ものをいうのは、このキャリア。テストに合格するには普通のプロでも最低五年はかかるそうでいま渡辺君は周り道をとりかえそうと、毎日せっせとグラブをふっている。
まさかプロ・ゴルファーになるとは夢にも考えていなかったーと渡辺邦彦君(26)はいった。小学校の六年生から野球ひとすじに進んできた人が、未知の世界へ転身したものだ。阪神電車の野田社長が、いまの住まい、芦屋カントリー・クラブの理事長をしている関係で、すいせんしてもらったが、「とにかく、ゴルフなんて全然知らなかったので、考えましたけれども、そう深くは悩まずにはいりました」最初はボールが真っすぐに飛ばず、だんだんむずかしくなるのでやっぱり、どんな職業でもプロと名がつけばその道は実にけわしいと彼はつくづく思ったそうだ。高校時代は、米田(阪急のエース)の三年先輩で、境高の一塁手で、四番バッターで活躍したものだ。二十七年の夏に、甲子園の土を踏んだキャリアを持っており、球友には一年下の拝藤(広島の投手)がいる。ノンプロは米子鉄道管理局に四年間、捕手で四番、年間20ゲームで6ホーマーを放つスラッガーだった。高校卒業のときに、スカウトにきた御園生氏の関係で「野球をやるなら一度プロへはいって」と阪神へ入団したのが三十二年。一年間、ファームの三塁手としてやったが、自分の力を知って、プロ野球から足を洗った。「そりゃ、野球をやめるときは、ずいぶん名残りも感じましたが、いまでは、そう野球もやりたいとは思わなくなりましたね。もうゴルファーになってから三年目ですからね」と遠い昔をしのぶ。親友だった鎌田や並木は、いまやタイガースのレギュラーとしてバリバリ働いている。初めのころは、野球とゴルフとは、そう関連性がないと思っていたけれども「最近では、かなり相通じるところがあると考えるようになったんですよ。自分のフォームを分解して研究するところなどは似通っています」と。しかし、野球の場合は、動くタマに対してタイミングを考える。ゴルフは静のマトに向かってふる。動と動、静対動の相違で、野球にはないむずかしさがあって「バッティングのくせで身体が動くので、身体をとめるのにひと苦労でしたよ」という。選手権など正式競技に出場する資格のテストが、ことしから一段ときびしくなったが「来年はパスできると思うんですよ。早く選手権にも出てみたいですからね。これが第一の目標ですよ」と自信のある語り方だ。これからはメンタルなものを身につけることで、まだまだキャリア不足だそうだ。ゴルフの世界で一番ものをいうのは、このキャリア。テストに合格するには普通のプロでも最低五年はかかるそうでいま渡辺君は周り道をとりかえそうと、毎日せっせとグラブをふっている。