プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

田原藤太郎・田原基稔

2023-01-17 17:56:53 | 日記
1954年


ドラゴンズの奈良キャンプを覗いた者はだれでも「今年の中日の新人は体格が皆素晴らしくいい、高校生離れのした奴ばかりだ」と感心する、北海高から入団した田原弟など上背だけ見れば六尺五寸で普通だが、重量は十九貫を上回るほど、筋肉質でがっちりしまった体格は「どうです、一寸やそっとじゃあヘコたれないですよ」と宮坂二軍監督が眼尻を下げる御自慢のしろものである、一日四時間以上の猛トレーニングも「全然辛くない」と平然としており、もうレギュラー・バッティングの投手を勤めている。「ウェイトがよく乗り、リストが利いているから球が重くて低目に来て伸びる、コントロールもいいようだ、練習での球威は申し分ないね」(大島投手談)という通り先輩風に負けない力は持っているのだが、まだまだその威力は練習面の威力に過ぎないようだ。それは今年国鉄から移ってきた実兄基稔投手の言葉によって報われる。「弟は確かに私より素質、体力すべての点で優れている、腰も強いし羨ましい位だが、一つ気掛かりなことは、気が割に弱いということだ、ここへ来た当時どうも落着かなくて困るといっていたし」また本人も「精神的の鍛錬が一番僕に必要だと思うんです、一軍選手の人に気を使いすぎて」と語っているようにキャンプでの最大の課題はプロ野球の雰囲気に馴れ、融けこむことであろう。その点ではどうしても兄さんに一日の長がある、十五貫三百の重量で頼りない感じだが「十六貫となるといけない」という「今年一年のつもりで入ってきたが、国鉄にいた頃のモヤモヤもなくなったし、故障もなおった、どうせ弟とちがって非力でコマ化しピッチングだが、シンカーを武器にしてやってみたい」とトレーニングぶりも弟には負けられないワイといった気概がみられる、野口捕手もなんといっても経験者だけに兄さんの方がやるさ、国鉄でぐずいていたのは肱が悪かったからでシュートがいいしピッチングそのものに味があるとなかなかに買っているので、その登板はシーズン早々見られると思って間違いない。こうして兄弟そろって中日のマウンドを守ることになるのだが、同一チームなので気苦労も大変である、兄さんは「兄弟だからといって特別の眼でみてもらいたくないし、お互いに一個の独立した社会人であることははっきり自覚している、そして弟にはこれが兄貴かと思わす位きびしくしている」と語ったが、弟も「兄は兄、僕は僕」と割り切って懸命に精進している、好きで入った中日のために立派に働ける日を夢みて。

コメント
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