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プロ野球 OB投手資料ブログ

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酒井光次郎

2024-12-06 22:45:25 | 日記
1989年
「阿波野さんと同じ背番号が欲しい」日本ハムのドラフト1位・酒井光次郎投手が、熱パの主役・近鉄阿波野と同じ栄光の「背番号14」を熱望した。「背番号?できるなら14番がいいです。僕にとっては、一番輝いて見える背番号ですから」阿波野との出会いは、松山商2年の時。当時、大学2年だった阿波野のいる亜大と合同練習をした。同じ左ということもあって、視線は自然に阿波野にそそがれる。「鮮烈でした。球が速いだけでなく、緩急の使い方が素晴らしいんです。あの人に金属バットは無力でした」肌で感じたザ・ピッチング。七つの球種を駆使する多彩な投球術の一つの原点となった。その時もらったグラブは宝物として、大学寮の自室に飾ってある。大学時代の実績では、既にあこがれびとを抜いている。阿波野が一度もできなかった大学選手権Vを3回、公式戦80回3分の1連続無失点という快記録も打ち立てた。エースナンバーではなく自ら選んだ「背番号14」を背負って。日本ハムでは現在「14」番は川原。14番熱望をナマイキに聞こえるが、阿波野と同じ土俵に上がれるという熱い思いがこう言わせる。「プロの世界で早くライバルと認識してもらいたい」七つの球種を持つ即戦力ルーキーは、パのエースに敢然と宣戦布告した。


1990年


近鉄野茂が「ミスターK」なら、日本ハムのドラフト1位は「ミスタークレバー」だ。身長172㌢の小さな左腕が、プロ初先発で、5安打1失点の完投勝利。一度も連打を許さない頭脳的な投球で、チームに今季初の3連勝をもたらした。「ルーキーに先発させる監督は勇気がいるものでしょ。それにこたえたかったんです」この冷静さ、だがこれくらいの落ち着きがなければ、最高速137㌔ではプロの打者を打ち取れない。100㌔台のカーブと120㌔台後半のスライダーを基本に、速球、シュートを巧みに組み合わせる。「けっこう甘い球があったのに。なぜかタイミングが合わない」とダイエー山本。ベテラン若菜の好リードも手伝って、ダイエー打線に的を絞らせなかった。「ちょっと勝利投手を意識しちゃって」という5回がピンチらしいピンチ。小川史に得意のカーブを適時打され、動揺するかと思えば、マウンドでこんなことを考えていた。「あれっ、オレ、ドキドキしている。そうか、これがいわゆる勝ちを急ぐ心理状態なんだ」戦っている最中でも、自分を冷静に見詰めていた。だが、意外に縁起をかつぐ一面もある。18日のダイエー戦でワンポイント登板したが、打者3人に対し2安打され2失点。そのとき使っていた赤いグラブに代え、この日は新しく黒のグラブを使った。「けっこう気にするタイプなんです」近藤監督が「素材の良さはキャンプで分かっていた。剛の野茂、柔の酒井をパの売り物にしたいね」と言えば、酒井も「日本ハムの1位は何やってんだ、と言われたくないですから」と指揮官の心情を察し、呼吸もピタリ。ミスタークレバーが、ロッテ小宮山、西武潮崎、近鉄野茂に続き、新人王争いに名乗りを上げた。


ルーキーの酒井がダイエーを封じ込んだ。4度目の完投勝利でプロ初完封。酒井は直球にカーブ、スライダーを交ぜてスピードに変化をつけた。2度三塁に走者を置いたが、2回は二ゴロ、4回は三振に仕留めた。打線は4回、2死二塁から古屋以下の3連打で2点。6回ウインタース、8回大島が本塁打して突き放した。ダイエーは酒井の球に狙いを絞り切れず今季チーム最小の2安打、凡打を繰り返した。


急ぐな!慌てるなよ!そればかりを念じてのマウンドだった。序盤から味方打線が着々と加点してくれる。自然とこみあげてくるプロ初完封への色気を必死に断ち切りながら、酒井は「大事に大事に」一球一球を投げ込み続けた。2試合連続のミスを、即戦力の評価を受けてドラフト1位入団した頭脳派左腕は、しっかりとピッチングの肥やしに変えていた。「すぐに勝ち急いで7、8回に点を取られてしまってましたからね」7月22日の西武戦では8回途中で、30日のオリックス戦でも7回終了でマウンドから下ろされた。試合前半は計算通りの投球をしながらツメの甘さが黒星を先行させてしまっていた。焦って根負けだけはするものか。そんな思いがボールに乗り移ったのは7回裏、ダイエーのベテラン有田との対決だった。ムシぶろのような登場。まさに胸突き八丁で迎えた1死一塁だった。2-1と追い込みながら有田は簡単に引き下がってくれない。力いっぱい投げても、曲げてもカットされる。7球連続ファウル。ジレる心を必死で殺して「それじゃあ思いっ切り、抜いた球でいってみよう」で、超スローカーブで勝負して三振切り。まさに急がば回れを地で行くパターンで、気がつけば感激の初完封勝利をその手に収めていた。

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