唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

姫が多い

2006-08-22 09:20:20 | Weblog
枢密使王守澄のもとへ鄭權がやってくるのはめずらしいことではなかった。

しかし今日の權はものいいたげな風情でこちらをうかがっているようだ。

工部尚書としての權にいろいろ便宜を図ってもらっているので守澄にはすこし気になる。

「どうかしましたかの權殿」

「いや、今日はお願いの筋があって」

「はてどのような」と守澄

「嶺南の節度使が亡くなられたそうですな」

「そこで私を後任にというわけには・・・・」

「暑い所は嫌いだとうかがっておりましたが」

「いや、そうも言っておれなくなって、金詰まりで」

「金に困っておられる?」

守澄はすこし驚いた。權は横海・邠寧など節度使を経ている。

人並み以上の資産はあるはずである。

「いや今の給与は安いのに、女どもに金がかかりましてな」

そういえば權には妾が多いという噂を聞く。

「女とはそんなに金がかかるものですか?」と守澄

「ご経験はないとは思いますが・・・・・」

宦官相手に話すには適当ではないかと權は言葉を濁した。

守澄も複雑な顔をしていた。

「權殿にはいつもお世話をいただいているのですからできるだけの事はいたしましょう」

權が帰った後、守澄は

「しかし女と炎暑では身がもつかどうか・・・」

とつぶやいた。

まもなく權は嶺南節度使に任用された。

嶺南は三年勤めると孫の代まで遊んで暮らせるという職であった。

翌年十月炎暑が続く中で權は亡くなった。