唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

緊急避難

2006-08-26 09:22:29 | Weblog
「緊急事とは何だ」

「宰相が襲撃され、お怪我をされました」

「なに・・・・」文宗皇帝は絶句した。

開成三年正月の事だった。

「傷の程度はどうだ」

「幸い命に別状はございませんが」

すでに文宗には犯人はわかっていた。

宦官仇士良一派が、その専権を妨げる宰相李石を
除こうとしたものだ。

三年前の甘露の変以来、宦官達の勢力は強く

文宗や宰相は押されっぱなしである。

ただ石だけが抵抗していた。

「またやるかもしれん」

「護ってやることは朕にはできぬ」

文宗は己の無力さをひしひしと感じた。

一月後、傷が癒えた石が参内した。

「石よ、荊南節度使として行ってくれるか」

それが文宗が、石の命を護ってやれる唯一の手段だった。

傍らで仇士良が憎々しげに石をみつめていた。
コメント
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