唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

奇襲

2006-08-08 08:07:05 | Weblog
「蔡州!」

「蔡州といったのか?」

「まさか本気か・・・・」

李愬の兵達に戦慄が走った。

淮西を攻めること四十年。

官軍は敗北を続け、近づいたこともない蔡州城

愬はそこを襲撃すると命令したのだ。

横なぐりの吹雪がつづく張柴の村であった。

強襲して駐屯していた淮西兵を潰滅させた後

「五百はここを守れ」

「五千は俺と共に蔡州を攻める」

と愬は命令した。傍らには李祐の姿が。

「はたして祐の計に嵌められたか」と監軍は呻いた。

前の戦で淮西の勇将祐を捕らえた。

祐は残虐で、官軍の憎しみの的だった。

諸将は、当然だだちに誅殺になると期待していた。

ところが愬は祐を優遇し、二人でひそかに謀議を重ねていた。

「祐など信用できるか・・・」と諸将は思っていた。

「ここまで深入りしてしまったのだ、行くしかないぞ・・」

諸将や監軍達も逃げ帰ることなどできないことはわかっていた。

祐は言った。

「蔡州城はがら空きだ」

「官軍が攻め寄せてこれるなどとは夢にも思っていない」

「精鋭は郾城にすべて出払っている」

「いくぞ」と愬は馬を走らせた。

たちまち激しい吹雪がそのすがた隠した。

「蔡州・・・へか!」監軍達は必死で馬を走らせた。