唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

剛直

2006-08-18 08:51:33 | Weblog
「なんて奴だ、こんどの京兆尹は」

「金を返さないくらいで軍吏をぶち込むとは」

「でも普通ならそれが当然なんだぜ」

「あいつは神策軍の恐ろしさを知らないのか」

「期限が来たら死刑にするとも言っているんだぜ」

「ふざけた奴だ陛下が叱ってくださるさ」

皇帝の親衛軍である神策軍に属するもの達の横暴は京師ではいつもの事である。

金は無理に借りる、踏み倒す。

物を安く買いたたき、ろくに金を払わない。

訴えても、相手が神策軍関係なら役人は怖れてとりあってくれない。

ところが新任の京兆尹許孟容は、

金を借りたまま返済しない李をいきなり牢にぶちこみ

期日までに完済しなければ死刑にすると申し渡したのだった。

驚いた神策軍の司令官である宦官は皇帝に訴えた。

皇帝はを釈放するように通達したが孟容は受けなかった。

そして奏上した。

「陛下は私に京師を統轄させました」

「私は陛下の法を以って政事を行っています」

「法では借りた金は返すことになっています」

「を赦すことは陛下の法に背くことになります」

皇帝は孟容の剛直に感嘆して命令を撤回した。

神策軍に巣くっていた不逞の連中は戦慄し、あわてて借金の清算に走った。