宝応元年三月李輔国の讒言により配流されていた高力士が赦された。
蛮族出身の宦官とはいえ、僻地の黔中での生活は身にこたえていた。
玄宗皇帝の信任を得て、開元・天寶の40年間を切り回していた栄華が戻るわけ
ではないにせよ、また玄宗上皇の元に戻ることができる事は雲にも昇る気持ちで
あった。
「早く京師に戻り拝謁したい」
「李輔国も死に、上皇はさぞお喜びであろう」
力士は老齢にもかかわらず旅を急いだ。
しかし山間の道を抜け、揚子江沿の州にたどりつくのにも数週を要した。
そしてそこで待っていたのは
「急ぐことはない、上皇はすでに崩じられた」という報せであった。
無理に無理を重ねていた力士には致命的な報せであった。
「あの世でお仕えすることにしよう」
鄙びた州の一隅で、老宦官は吐血し息絶えた。
蛮族出身の宦官とはいえ、僻地の黔中での生活は身にこたえていた。
玄宗皇帝の信任を得て、開元・天寶の40年間を切り回していた栄華が戻るわけ
ではないにせよ、また玄宗上皇の元に戻ることができる事は雲にも昇る気持ちで
あった。
「早く京師に戻り拝謁したい」
「李輔国も死に、上皇はさぞお喜びであろう」
力士は老齢にもかかわらず旅を急いだ。
しかし山間の道を抜け、揚子江沿の州にたどりつくのにも数週を要した。
そしてそこで待っていたのは
「急ぐことはない、上皇はすでに崩じられた」という報せであった。
無理に無理を重ねていた力士には致命的な報せであった。
「あの世でお仕えすることにしよう」
鄙びた州の一隅で、老宦官は吐血し息絶えた。