唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

水

2006-09-26 18:24:29 | Weblog
「今日はめでたい日だ、吐蕃との厳しい戦いがすみ平和がおとずれるのだ」

皇帝は出御するとほほえみながら切りだした。

「御意、おめでとうこざいます」と馬燧が応じた。

その日、水において唐と吐蕃の盟約がかわされることになっていたのだ。

吐蕃の何度もの侵攻で唐は疲弊していた。

「はたして平和が来るのでしょうか、吐蕃は信用できるとは思えません」

と柳渾はつぶやいた。

「私も吐蕃など信用できません」と李晟も同調した。

「お前らになにがわかる、特に渾のような書生に邊事がわかるのか」
と皇帝は激怒して叫んだ。

その剣幕に宰相達はひれ伏して謝罪した。

気まずいふんいきの中で廷議も早々に打ち切られた。

その夕、急報が入った。

「吐蕃は違約し、唐の使者を捕らえた」

「吐蕃は再び侵攻を始めた」

皇帝は驚愕し、あわてて宰相達を集めた。

「渾よ、書生でありながらよく夷狄のことがわかるの」

帝はきまり悪げに話しかけた。

このことが骨身にしみたのか

帝は長い治世に二度と吐蕃と交渉しようとはしなかった。
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