マルクスだったらこう考える光文社このアイテムの詳細を見る |
以前に「 共産主義=悪を刷り込まれた世代? 」というエントリを書いたことがあるが、自分の場合、世代的にも個人的にも共産主義に対するアレルギーがある。
生まれてこのかた、マルクスなんて見向きもせずに生きてきた。
が、最近ではそのように自分がこれまで目をくれることの無かったような考えについてもなるべく興味をもって視野を広げていこうという考えもあり、書店で目についたこの本を読んでみることにしたのである(あんまり難しく無さそうだったし)。
不況・リストラの嵐に労働者が苦しんでいる現代の日本(この本が書かれたのは2004年)に、マルクスが登場したら・・・という仮定を置きつつ、生粋のマルクス研究者である著者(1952年生まれ)が現代社会(世界)に対する見方を展開していく。
目からウロコ、というほどではなかったが、正直けっこう新鮮で感銘を受ける点があったことは否定しない。
グローバリゼーション、アメリカの覇権主義、格差社会など、現代社会をずばりずばりと断罪していくあたりは歯切れが良く、なるほど自分よりも少し上の世代の人たちがマルクス主義に傾倒していった気持ちもわからなくはない気がした。
著者によれば、20世紀終盤に崩壊したソ連型の社会主義は、マルクス主義の本質を備えたものではなかったとのこと。それらは所詮国民国家の単位という制約をもったものであり、資本主義のグローバリゼーションに対して抵抗力を有するものではなかったと。共産党独裁による「私有制」であったとまで言う。
で、グローバリゼーションが世界の隅々まで行き渡り、全世界が資本主義に飲み込まれたときこそ、グローバルな労働者の団結をもってマルクス主義は資本への抵抗力を持ち、ついに真の階級闘争が始まると。
うーん、ここまでくると、理念としてはわからなくはないんだけど、やっぱり夢物語のようにしか聞こえないなぁ。
共産主義が成立するための最大のポイントって、人がどこまでフリーライダー(ただ乗り者)に対して寛容になれるか、だと思う。
自分よりも能力が低い人間、或いは自分よりも怠惰な人間が、自分と同じ生活レベルを送ることを許容できるかどうか?
それって人間という動物の本質として無理があるように思うんだよなあ。残念ながら。