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最近は心がけて流行りモノを読んでいるので、これも読んでみた。
悪くない。
少なくとも金の無駄、時間の無駄だったとは思わない。
ま、仮に彼が2作目を書いたとして、読みたいとは思わせるほどではないけど。
器用なのは間違いないが、作劇にしても描写にしても突き抜けるオリジナリティに欠ける。
設定がベタだし、描かれる世界観も想像の範囲内に小さく縮こまっている。
1篇目のホームレスの話、2編目のアイドルオタクの話あたりは、ベタさが丸出しでいただけない。
3篇目から好転し、4編目の多重債務者のギャンブラーの話は、テンポで笑わせられるし哀切さも醸し出し、なかなか良い。
5編目は物語としてはともかく、巧妙なワザ(ネタバレになるので詳しくは書かないが)が駆使されていて、そのことに感心した。
5編の短編は、それぞれ登場人物が微妙に交錯し重なり合う。
群像劇においては使い古された手法で特段目新しさはないが、このあたりにも器用さが伺える。
(上記した「巧妙なワザ」とはこのことを指しているわけではない。)
ネット上でも絶賛されまくっているようだが、「読みやすい!」という感想が目に付く。
著者本人も「難しい漢字を使わず、とにかく読みやすく書くことを心がけた」というようなことを話しているのを見た。
ここ数年、小説にしても映画にしても、「泣ける!」という評価があたかも褒め言葉であるかのように世間で当たり前のように使われていることに違和感を抱いてきたが、この本の成功を受けて、これからは「読みやすい!」という尺度が評価軸になってしまうかもしれない。
そう思うとやや暗澹たる気持ちになる(別に難解だからエライなどと言うつもりはないけど)。