そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「農家切り捨て論のウソ」と食糧自給率

2007-09-21 23:31:24 | Politcs
今から2ヶ月ほど前、神門善久氏の「日本の食と農」という本を読み、このブログに感想も書きました。
その時期はちょうど先の参院選と重なっており、小沢民主党は公約として農家への戸別所得補償を掲げ地方の一人区で大勝利。
小泉改革で切り捨てられた地方の反逆などといった見方もされました。
こういった世の中の流れに対して、神門氏のような見識を持った人がどのような評価をするのかぜひ聞いたみたいな、と思ってたところ、日経ビジネス「NBonline」に「農家切り捨て論のウソ~小手先の保護政策が日本の農業を”自壊”に招く~」と題した神門氏へのインタビュー記事が掲載されていたので、飛びついて読んでみました。
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予想通りに、というか予想以上の切れ味でばっさりと斬られています。
例えばこんな感じ・・・

マスコミは「零細農家イコール弱者」のような形で描きたがりますが、現実には彼らほど恵まれた人たちはいない。農地の固定資産税が軽減されているうえに、相続税もほとんどかかりません。たとえ“耕作放棄”をしていてもですよ。
そのうえ、農地を売却すれば大金を手にできる。「田んぼ1枚売って何千万円も儲けた」なんていう話はザラにある。

農家が望んでいるのは、小沢さんの所得補償政策のようなチッポケなお金ではありません。彼らが本当に求めているのは公共事業なんです。公共事業で道路などを作ってもらえれば、自分たちの田んぼや畑が高く売れるでしょう。

ところが、小泉(純一郎)さん以降の自民党政権は公共事業を大幅に削減してきた。農家にとっては、公共事業を通じて農地を高く売る機会がグンと減ってしまったわけです。この状況に農家は不満を持っている。だから、今回の選挙で民主党を勝たせることで自民党に揺さぶりをかけたのです。「自民党さん、このまま公共事業を減らし続けるなら、民主党に付いちゃいますよ」と。

基盤整備は本来、農業を良くするための公共事業です。ところが現実には、この例に限らず、事業の趣旨を履き違えている農家が多いのです。そもそも、公費で私有地を整備してもらった揚げ句、それを売って個人が儲けるというのは普通許されないでしょう。ところが、農業の世界ではそれが堂々とまかり通っているのです。これはほんの一例ですが、農家が公共事業を求める理由が分かるでしょう。

神門氏の見解が公平で真っ当なものなのか、それとも極端な見方なのか、全く知識のない自分には判断はつきません。
ただ、普通にマスコミが流している報道を見聞きしているだけではけっして触れる機会が訪れることのない貴重なスコープを与えてくれるものであることは確かだと思います。

ところで農業・食糧関連といえば、「日本の食糧自給率はあまりに低すぎるので国策としてこれを高めなければならない」という議論は絶対的に正しい命題として受け容れられてますが、自分にはわかるようでわからんというか、どうも腹に落ちないところがあったりします。
現状の日本の食糧自給率が例えば40%だったとして、農業振興でこれをがんばって高めれば100%を超える、というのであれば意味はあると思います。
鎖国したって食っていけるってことですから。
だけど、がんばって自給率を上げても50%、60%がせいぜい、ということだとするなら、自給率向上に力を注ぐことに意味があるのか疑問に思えてきてしまいます。
結局輸入食糧が無ければ立ち行かなくなるという状況は変わらないわけで。
そうだとすると、割り切ってしまって、輸入が安定的に供給されるよう国際関係を良好に保ち自由貿易を振興するという方向に路線転換する方がいいんじゃないか、というような気にもなってきます。
素人考えですが。
コメント
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