新潮選書 「3」の発想 数学教育に欠けているもの芳沢 光雄新潮社このアイテムの詳細を見る |
ナベアツ…とは関係ありません。
数学的思考において、「3」の発想がいかに肝要であるかについて、多くの事例を紹介しながら説明した本。
「2」の発想と「3」の発想の違いとは。
ドミノ倒しの例でいえば、2つのドミノしかなければ、「倒すドミノ」と「倒されるドミノ」の対向関係に終始してしまい、それ以上の広がりが出てこない。
ドミノが3つになると、真ん中のドミノは「倒されながら倒すドミノ」となる。
この「倒されながら倒す」という発想があれば、ドミノの数は4,5,6…と無限につながっていく。
すなわち、「2」と「3」の間には決定的な違いがあり、「3」の発想を会得できれば「4」以上はその応用で如何様にもなる。
ティッシュペーパー、3桁同士の掛け算の縦書き筆算、あみだくじの縦線の数、3項計算、二人三脚…様々な事例に「3」の発想が適用できる。
数学教育が専門である著者は、この「3」の発想を養うような教育が、今の日本には不足していることを指摘しています。
本書で紹介されているもの以外で個人的に連想したのはサッカーのプレーヤーの動き。
ハンス・オフトが日本代表の監督になったときに、「アイ・コンタクト」などといっしょにチームに持ち込んだと言われていた基本コンセプトの一つが「トライアングル」。
いわゆる「三人目の動き」ってやつです。
パスの出し手と受け手、二人だけではそこで動きが完結してしまうところ、ボールを持たないプレーヤーが三角形を作るようにスペースを探して動く。
そうすることでチームにダイナミズムが生まれ、四人目、五人目と動きが広がっていく。
それ以外にも、二人兄弟と三人兄弟の違いとか、適用できるかも。
簡単な数学を使った証明などの事例もたくさん出てきますが、高校までで数学の勉強がストップしてしまった自分には、久々に目にする概念が目白押しでした。
数学的帰納法、相加平均と相乗平均、漸化式と一般項、結合法則と分配法則、指数法則と対数公式…等々。
高校数学が頭に甦ってきて、なかなか懐かしいものがありました。