フェリカの真実 ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由 | |
立石泰則 | |
草思社 |
ソニーが1997年に香港の公共交通機関向け非接触IC「オクトパス・カード」の生産を始めてから、フェリカICチップの累計出荷数は、2010年6月末時点で4億6千万個を突破したとのこと。
殆どのガラケーにはモバイルフェリカICチップが載っているし、ナナコもワオンもスイカもパスモも電子マネーの種類は違えど基盤はみなフェリカなわけです。
タイプAとかタイプBとか、国際的にみれば非接触ICのライバル規格が存在するにも関わらず、少なくとも国内市場を席巻しているという点では素直に凄いなあと感じるわけですが、その規模感がそのままソニーの収益に繋がっているかというと、そういうイメージはない。
技術で勝ちビジネスで負けた、ソニーの非接触IC事業の20年余にわたる歴史を振り返るドキュメンタリーです。
焦点は、ソニーが独自に進めたビットワレットによる電子マネー”Edy”事業の失敗に当てられています。
実はJR東日本がスイカを出したときに、ビットワレットが提携して、決済手段としてエディを載せる道もあったとか。
ここでうまく提携できていれば、スイカやパスモが別規格の電子マネーとして展開されることはなかったことでしょう(それでもナナコやワオンは出てきたかもしれないけど)し、その後ビットワレットが楽天に買収されるようなことはなかっただろうと思います。
が、その果実をソニーがうまく吸収できていたかどうかはまた別の話という気もします。
モノ作りをやってきた会社がオペレーションで儲けるには、相当の戦略性が必要になるわけで、その点やっぱりAppleは凄いな、と改めて思わされます。
まあそれはそれとして、本来、決済の「手段」でしかないはずの電子マネーをアプリケーションと切り離して独自に展開しようとしたことに無理があった、という点には重要な教訓が込められている気がします。