![]() | 眉山 (幻冬舎文庫 さ 8-4)さだ まさし幻冬舎このアイテムの詳細を見る |
短時間ですらすらと軽く読めそうな小説が読みたい気分だったので、映画化されて現在上映中の「眉山」原作を買ってみた。
軽く読めたという点では期待どおり。
テーマ的には軽いというわけでもないんだけど。
阿波踊りという一大イベントに対する地元の人たちのひとかたならぬ想いが、よく描かれていた。
主人公の女性は、どちからというと控えめでおとなしいタイプなんだけど、子供のころから身体の芯まで阿波踊りが染みついており、囃子が聞こえるだけで自然と体が熱くなり、つい腰が浮いてしまうと言う。
そういう感覚って、本当に伝統のある地元の祭りを体験している人たちには共通して存在するものなんじゃないか、という気がする(阿波踊りほどメジャーなものでなくても)。
うちのヨメの家族なんかもまさにそんな感じで、年に一度の夏祭りのために生きてるんじゃないか、という気すらするのだ。
東京の住宅街育ちで、祭りといえば団地の盆踊りくらいしかなかった自分には存在しない感覚。
そういうのがとても上手に描かれていて、その上でクライマックスに登場する阿波踊り本番の場面はなかなかの情感を生み出す。
一方で、主人公の母親である「神田のお龍」さんの生涯にまつわるドラマの部分には、いまいちノレなかった。
「神田のお龍」さんはたいそう魅力のある女性として描かれているのだが、その魅力がすべて、登場人物による、ひいては作者による言葉で”説明されている”ような印象を受ける。
どうも血が通っていない感じがするのだ。
話のキーポイントとなる「献体」についても、その真相を含めてやや説明的に過ぎるような気がするし、サイドストーリーである主人公と医師の関係もややベタ。