8月に入って芝生広場のサルスベリが咲き始めました。
雄しべが2種類あったり花も面白いのですが、名前のとおりサルも滑るという幹を見ていて樹皮が気になりだしました。
樹木は肥大成長、つまり幹が年々太くなるわけで、樹皮はそれに対応しなければならないのですが、このサルスベリは分かりやすい。
新しい樹皮が作られるとともに古い樹皮が剥がれ落ちる。
関東以西に自生するバラ科サクラ属の「バクチノキ」というのがあります。
サルスベリに似て剥がれ落ちるタイプで、名前も単刀直入です。
【博打に負けて身ぐるみ剝がされる】
自生種でいえば、ナツツバキ、リョウブがこのサルスベリタイプでしょうか。
ケヤキやトチノキは、高齢になると樹皮が割れてきます。
これが、かさぶたの様でむらむらと剥がしたくなります。
マツやコナラは、縦すじが入り樹皮が積み重なっている様子がわかります。
アカシデやホオノキ、ブナのような裂け目のない滑らかタイプは、樹皮の新陳代謝がイメージできません。
謎なのですが、目に見えないレベルで表面の破壊剥離が起こっているのでしょう。
さて、こうして樹皮を検分していて、これまでに見た記憶のない光景に出くわしました。
左アカマツ、右スギです。
このスギが恐らくつらい思いをしています。
幹いっぱいにヤニが垂れています。
血の涙のようです。
これほどのヤニは見た記憶がありません。
スギは、そもそも樹脂道をもちません。
樹脂道・・・材木屋さん風に言えばヤニツボ。
マツはもともと持ってます。
スギの樹脂道は、傷ついたり、虫が食ったり、環境ストレスを受けたときなどに形成されます。
何かの原因で、樹脂道が形成され、多量の樹脂(ヤニ)が生産された結果、表に流出したものと思われます。
原因を推理します。
真っ先に思うのは、6月後半、ほとんど雨が降らない中、異常高温が続いたことです。
このスギは、通常のスギのように林を形成しているわけではなく、陽当りの極めて良い芝生広場横の丘の上にぽつんと植えられています。
植林するとき、尾根はマツ、中腹はヒノキ、谷筋はスギと言われるように、スギは水を欲しがります。
雨もない中、下草もない地面や幹は、直接太陽に照り付けられ恐ろしく高温の世界にさらされていたことでしょう。
結論。
この時の環境ストレス、特に根系のストレスにより、エチレンが大量に生成された。このエチレンが傷害樹脂道の形成を誘導するとともに、多量の樹脂が生産された結果、樹脂が流出した。以上。
日の当たらない裏側は、あまりヤニは垂れてません。
近くのスギも見て回ったところ、やはり日当たり面でのヤニの流出が若干見られましたが、大したことはありませんでした。
前のスギに比べれば、影ができたり環境的にはましだったのでしょう。
涙ではなく宝石のように見える樹脂もありました。