代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

明日、NHK総合の「明日を読む」で違法伐採問題

2005年04月28日 | 世界の森林問題
 先週、NHK解説委員の方から、昨年のフィリピンの洪水災害と違法伐採の関係に関して取材を受けました。明日4月29日(金)の11時45分からNHK総合テレビの「明日を読む」で取り上げられるそうです。私の名前は出ないとは思いますが、違法伐採現場で撮影した写真などをNHKに提供しておきましたので、私のコメント内容とともにいくつか紹介されるかも知れません(もしかしたら編集で全部カットされるかも知れませんが)。興味のある方は観て下さると嬉しく存じます。
 現在、EU諸国は違法伐採材の貿易を徹底的に取り締まるよう、本格的な対策に乗り出そうとしており、今年のG8のサミットでも大きな議題になるそうです。熱帯林問題は、最近はちっともマスコミも扱ってくれなくなりました(問題は深刻化する一方なのに!)。違法伐採問題などで、マスコミが少しでも関心をもってくれることはありがたいことです。
 もっとも、日本は中国と並んで世界でもっとも大量の違法伐採材を輸入している国です。EUからの外圧を受けて関心が高まるというのは、実は情けない限りなのです。

 私は1990年代の後半、ルソン島の山の中で、住民の大半が違法伐採に依存して生活しているような村で調査をしておりました。どうやったら、そうした地域で持続可能な林業を構築可能かというのが研究課題でした。
 昨年、ルソン島を相次いで襲った大型台風では、洪水と土砂災害で1000人以上の命が失われました(私の調査地の近くです)。フィリピン国内では商業伐採および違法伐採と洪水の関連が大きくクローズ・アップされ、フィリピン政府は昨年の12月に国内の伐採活動を全面禁止にしたのです。

 しかし伐採を禁止された現場では、労働者が職を失って困窮にあえぎ、子供を学校に行かすこともできない状態に陥っており、住民たちがデモを起こすといった具合で、フィリピン政府は結局3ヶ月後に全面伐採禁止措置を撤回しています。

 私の調査経験を申しますと、いきなり伐採を全面禁止することなど不可能なのです。かえって失業した伐採労働者が、違法伐採をやるようになるだけなので、事態をさらに悪化させるだけです。フィリピンでは今日、国内に流通する木材の50%以上が、違法に伐採されたものであると推定されています。
 フィリピン政府は、伐採を規制したり保護区を増やそうという美しい法律を整備しつつ、実際には保護区の中は違法伐採パラダイスになっているという失敗を繰り返しています。法的に伐採を禁止するということと、政府がその法を執行する能力があるか否かという問題は全くの別問題ですから…。。(この点に関しては、井上真編著『アジアにおける森林の消失と保全』中央法規、2003年の第6章の拙稿にも若干、書いてあります)。

 結局、20年くらいのタイム・スパンをかけて、伐採量を少しづつ減らしていきながら、植林を展開し、天然林の採取林業から人工林の育成林業へと切り換えていくことが唯一の解決法だと思います。

 さらに、その具体的方策に関しては・・・・。と、ここではとても書ききれません。今年中に何とか本を出したいと思っています。

 

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