代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

学生と間伐実習をしてきました

2007年11月26日 | 世界の森林問題
 昨日、山梨県の北都留森林組合のご好意により、ゼミの学生たちと除伐・枝打ち・間伐の体験実習をして参りました。
 間伐といってもシロートなので、チェーンソーはもちろん使わず、手ノコで直径10cm~20cm程度の成長不良の被圧木を間伐するというものです。15年生のヒノキ林でしたが、植えてから一度も手入れしていなかった森だったので中は真っ暗。ツルや竹が繁茂しておりました。竹やツルなどを取り除いて、枝打ちをし、間伐も体験させていただきました。
 写真は、学生たちが、ちょっと大きめのヒノキの被圧木をロープで引っ張って倒している様子です。

 私もブログで、地球温暖化対策としての間伐材のエネルギー利用を訴えてきました。しかし、日本の現状では間伐材のエネルギー利用はほとんど行われておらず、北都留森林組合でもほとんどの場合、間伐材を「泣く泣く」山の中に放置しているそうです。今回、私たちが間伐させていただいた材も、やはり「泣く泣く」山の中に放置してきました。

 学生たちの中から、放置されている間伐材を見て、「もったいない、何とか有効に使えないだろうか」という声が上がったのはうれしいことでした。3年生のSくんの出したプランは一考に値するかも知れません。S君のプランとは、大学の運動部の合宿で、筋トレをかねて、間伐材の運搬作業をやってしまおうというもの。

 森林組合の皆様も、「それはおもしろい」と肯定的でした。山から運搬してきた材を森林組合で買い上げれば、宿泊代くらいにはなるのではないか、とのことでした。つまり運動部は合宿費タダで、筋トレができるという寸法。これは一考に値するでしょう。

 Sくんの提案に対し、森林組合も、「それなら薪を運ぶ背負子(しょいこ)を貸しましょう」とすっかり乗り気。それこそ二宮金次郎みたいに、山から薪を運びながら学生が本でも読んでくれると、これは絵になりますね~。平成の世の中にそんな学生が忽然と姿を現してくれたら、じつに感動的なことです。
  
 もっとも今でこそ、ボランティアか行政が補助金でも付けない限り間伐材の運搬はなかなか行われませんが、このまま石油価格が上昇すれば、いずれは運搬を実行する経済的なインセンティブが発生します。これは間違いありません。

 北都留森林組合のお話でも、この間の原油価格の上昇によって、旅館などで風呂の湯沸かしを、石油ボイラーから薪ボイラーに変えるところも出てきているそうです。薪ストーブを設置する新築住宅もあったりして、以前に比べると薪が売れるようになってきたとのことでした。

 石油枯渇によって市場原理での転換が発生する「その時」を待つのではなく、温暖化対策のためにも未来を先取りして今から行うべきでしょう。
 日本政府が、公共事業のあり方を「温暖化推進型」から「温暖化対策型」へ切り変えればよいだけの話しなのです。間伐材を山の下まで運搬することを「公共事業」で実施するという発想を持てば、その後は市場原理に任せておいても木質エネルギーの普及は自然に進むはずです。それは治水対策にも、「失われた10年」の世代のための雇用対策にもなり、一石三鳥の効果を持つのでしょう。

PS 北都留森林組合の皆様が、さっそく私たちの林業体験実習の様子をHPに載せて下さいました。このページです。ちょっと恥ずかしいですが・・・。

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6 コメント

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ありがとうございました (muso@北都留森林組合)
2007-11-27 10:10:20
このたびはどうもありがとうございました。
皆様との出会いを大切にしていきたいと思います。
ぜひ、繋がって行ければと思います。
「つながる」ことで何かがはじまると考えております。
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musoさま ()
2007-11-28 17:46:50
 わざわざコメントありがとうございました。当ブログのブックマークに北都留森林組合のブログも加えさせていただきました。今後ともなにとぞよろしくお願い申し上げます。
返信する
早い段階から市場原理の規制を (愚樵)
2007-11-29 16:38:18
愚樵です。

この記事にはコメントしなればという義務感のようなものすら感じますが(笑)、このテーマについてはいろいろあり過ぎで、かえってコメントし辛いです。

間伐体験は楽しいものだったでしょうね。掲載された写真(北都留森林組合のものも含めて)からはそれは見えますし、S君のプランも若者らしい健やかなもので、これもきっと楽しさのなかから生まれてきたのだろうな、と感じます。

実際に山林作業に従事する者としては、そうした伸びやかさにどうしても複雑な気持ちを抱いてしまいますが、それを持ち出すのは野暮というものでしょうから、ここは自制しておきます。

現在アメリカの穀物メジャーが中心になってバイオエタノールの普及が推し進められていますが、耕地を荒らす穀物由来のバイオエタノールよりも、森林資源の有効活用に繋がる木質エネルギーの普及、特に間伐材の有効利用は一刻も早く推し進めてもらいたいものです。

木質資源だけでは都市のエネルギー需要を賄うことは出来ないでしょうが、人口の少ない地方のエネルギーを賄うことが出来れば、今後エネルギー価格の高騰が予想される中、過疎化が進み希望の光が見えない地方に再生の兆しをもたらすことが出来るかもしれません。これは道路建設などのカンフル剤的な公共事業のあり方よりも、ずっと建設的な税金の使い方だと考えます。

公共事業によって森林資源を活用するインフラを整備し後は市場原理でというのが常識的な流れになるのでしょうが、森林資源の活用を市場原理だけに任せてよいかどうかについては、大きな懸念を抱かざるを得ません。市場原理が作動する時間的な流れと森林資源が生育する時間的な流れはあまりにも違いすぎ、市場原理のみを基準に森林資源の活用がなされてしまうと、あとで取り返しの衝かないことになってしまう怖れが大きいからです。

はじめから規制ありきでは物事は前へは進みませんが、森林資源を有効活用しようとするなら、市場原理と資源再生の時間的な流れを調整する仕組みづくりが必要でしょう。
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愚樵さま ()
2007-11-29 22:41:32
>穀物由来のバイオエタノールよりも、森林資源の有
>効活用に繋がる木質エネルギーの普及、特に間伐材
>の有効利用は一刻も早く推し進めてもらいたいものです。

 愚樵さんのご意見に全く同感です。私も若干、この記事に補足いたします。

 これだけ温暖化とピークオイルが深刻化しているにもかかわらず、何故、日本政府は足元にこれだけ膨大に存在する間伐材という未利用資源の有効活用に真剣に取り組まないのか、不思議でなりません。日本政府のバカさ加減には、怒りすら覚えます。霞が関に任せといたって予算の奪い合いでらちが明きませんから、首相が「間伐材のエネルギー利用推進」の大号令をかけて、実施すべきと思います。

 まずは間伐材の運搬を公共事業としてやることだと思います。水害の際の流木被害を軽減させ、温暖化対策にもなるのですから、どう考えても公共事業で実施すべきことだと思います。
 「100年に1度の水害」に備えるというバカげたダムの何千億円もの税金を投入するのを止め、そのほんのわずかでも間伐と材の運搬に転用すれば、はるかに費用対効果の高い水害対策になるのに・・・。
 
 運搬してきた間伐材は、まず役所や小中学校などの公共施設の暖房源として活用すべきだと思います。まずは教育の現場で、教育の一貫としてペレット・ストーブや薪ストーブを活用することが大事だと思います。それを体験した小学生が、「父ちゃん母ちゃん、家でもあれを使おう」という話しをして、一般家庭にも広がっていくことでしょう。

 いずれなくなることが分かっている枯渇性資源と、子々孫々まで使える再生可能資源があった場合、価格なんて無視しても再生可能資源を優先的に利用することは人間に理性があるのなら当然の選択だと思います。
 市場原理がそれを許さないというのなら、「市場原理」なるものは人間理性の産物ではない、ケダモノ以下の原理ということだと思います。

 あと、温暖化によってこれだけ台風が巨大化してくると、今後は、水害対策の観点から「皆伐禁止」という規制措置がどうしても必要になると思います。主伐であっても、皆伐ではなく択伐に限ると。それで不効率になろうが何だろうが、国土保全と住民の安全の方がはるかに大事なことだと思います。
 もう市場原理なんて本当にナンセンスですね。
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タマリンの出来杉生活 (タマリン@Masanobu)
2007-12-09 01:39:22
はじめまして。間伐実習ごくろうさまでした。

山暮らしの立場から「杉の活用」を考えてみました。
原油価格高騰のおりご一考いかがでしょう。
下、URL最下段「タマリンの出来杉生活」よりお入りください。
http://www.shizuku.or.tv/forest.html
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タマリン様 ()
2007-12-21 23:24:27
 返信遅れて申し訳ございませんでした。大変興味深いサイトを紹介してくださってありがとうございました。高知は林業頑張っていますね。私も梼原町など見学に出かけたことがあります。間伐材の有効利用はがんばって参りましょう。今後ともよろしくお願いいたします。
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