Chic Stoneさんが、「割箸、中国の本気?」というエントリーをトラックバックして下さった。100円ショップで一膳一円の割箸を買い求めようとしたところ、「中国の割箸輸出規制にともない、入荷しにくくなっている」とのことだった。ちょうど先月中国にいた頃、中国の全人代で日本への割箸輸出が問題にされていた。全人代の某議員が、「日本は自国の森林を保護する目的で、中国から割箸として大量に輸入している。中国の森林を保護するためにも、日本への割箸輸出を禁止すべきだ」と述べたという。中国の新聞にも記事が載っていて、林業関係者のあいだでは話題になっていた。あれから一ヶ月も経っていないが、もう日本にも影響が出始めたようである。
ちなみに、その全人代の議員の発言の事実関係は全く間違っている。日本が中国産の割箸を輸入しているのは、純粋に価格が安いからであって、日本は一度として「国内の森林資源を保護するために外国産材を使おう」という政策を採用したことはない。日本の国産材割箸があまり使われない一方で、中国産の割箸が大量に使われるのは、消費者がより安いものを志向するからであって、「安いモノが高いモノを駆逐する」という自由貿易システムの必然的帰結にすぎない。
ちなみに、中国のみならず、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど日本に大量に木材を輸出してきた国々で、「日本は自国の森林を保護しながら、我々の木材を大量消費している。ケシカラン国だ」と思っている人々は多い。
私は、そういう意見を聞くたびに、「全くの誤解だ。これは自由貿易システムの必然的帰結だ。世界経済のシステムそのものに問題があるのだ」と説明してきたが、いかんせん、それらの国々のマスコミもそういう間違った言説を広めているので、簡単に誤解は修正されない。
私は中国の環境NGO関係者から「日本は自国の森林資源を保護する一方で、中国産の割箸を使い捨てにしている」と言われ、コメントを求められたことがある。それに対しては、「誤解だ。中国だって今やWTOに加盟して、木材輸入を自由化したため、ロシア材(その多くが違法伐採材)を大量に輸入し、国外の森林破壊に貢献するようになっている。これはWTO体制の不条理なのだ」と説明してきた。
その上で、「中国が日本へ割箸輸出を禁止するという政策を採用するのは大歓迎だ。是非やって欲しい。中国が割箸輸出を禁止すれば、日本人は多少高くても自国産の割箸を使うようになるだろう。それは、日本の環境にとっても日本経済にとってもよいことなのだ」と説明してきた。
100円ショップには申し訳ないが、中国の禁輸によって、私たちが多少高くなっても国産割箸を使うようになれば、間伐材の有効利用が進むだろう。割箸など間伐材や、製材工程で捨てられる端材から生産できるものだ。わざわざ中国の森林を傷つけ、輸送のための膨大な石油エネルギーなど消費せずとも国産すべきものなのだ。
日本の場合は中国と違って、国内の森林を使わないことが逆に放置人工林の荒廃問題を引き起こしているのだから・・・・・・。間伐材は切り捨てにされ、山の中に放置され、水害の原因になっている。間伐材を割箸に加工し、さらに使い終わった割箸を発電目的にでも使うのが本来は望ましい姿なのである。
つまり中国の割箸輸出禁止措置は、中国の森林保全のみならず、間伐の促進による日本の人工林の整備、水害の軽減、CO2の削減など一石何鳥もの効果を持つだろう。それは日本の消費者の不利益を補って余りある利益を生み出すだろう。
中国政府には、是非とも、対日割箸輸出の全面禁止措置を採用して欲しい。ただし、同時に日本の森林政策に関する誤った認識も訂正して欲しい。
ちなみに、その全人代の議員の発言の事実関係は全く間違っている。日本が中国産の割箸を輸入しているのは、純粋に価格が安いからであって、日本は一度として「国内の森林資源を保護するために外国産材を使おう」という政策を採用したことはない。日本の国産材割箸があまり使われない一方で、中国産の割箸が大量に使われるのは、消費者がより安いものを志向するからであって、「安いモノが高いモノを駆逐する」という自由貿易システムの必然的帰結にすぎない。
ちなみに、中国のみならず、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど日本に大量に木材を輸出してきた国々で、「日本は自国の森林を保護しながら、我々の木材を大量消費している。ケシカラン国だ」と思っている人々は多い。
私は、そういう意見を聞くたびに、「全くの誤解だ。これは自由貿易システムの必然的帰結だ。世界経済のシステムそのものに問題があるのだ」と説明してきたが、いかんせん、それらの国々のマスコミもそういう間違った言説を広めているので、簡単に誤解は修正されない。
私は中国の環境NGO関係者から「日本は自国の森林資源を保護する一方で、中国産の割箸を使い捨てにしている」と言われ、コメントを求められたことがある。それに対しては、「誤解だ。中国だって今やWTOに加盟して、木材輸入を自由化したため、ロシア材(その多くが違法伐採材)を大量に輸入し、国外の森林破壊に貢献するようになっている。これはWTO体制の不条理なのだ」と説明してきた。
その上で、「中国が日本へ割箸輸出を禁止するという政策を採用するのは大歓迎だ。是非やって欲しい。中国が割箸輸出を禁止すれば、日本人は多少高くても自国産の割箸を使うようになるだろう。それは、日本の環境にとっても日本経済にとってもよいことなのだ」と説明してきた。
100円ショップには申し訳ないが、中国の禁輸によって、私たちが多少高くなっても国産割箸を使うようになれば、間伐材の有効利用が進むだろう。割箸など間伐材や、製材工程で捨てられる端材から生産できるものだ。わざわざ中国の森林を傷つけ、輸送のための膨大な石油エネルギーなど消費せずとも国産すべきものなのだ。
日本の場合は中国と違って、国内の森林を使わないことが逆に放置人工林の荒廃問題を引き起こしているのだから・・・・・・。間伐材は切り捨てにされ、山の中に放置され、水害の原因になっている。間伐材を割箸に加工し、さらに使い終わった割箸を発電目的にでも使うのが本来は望ましい姿なのである。
つまり中国の割箸輸出禁止措置は、中国の森林保全のみならず、間伐の促進による日本の人工林の整備、水害の軽減、CO2の削減など一石何鳥もの効果を持つだろう。それは日本の消費者の不利益を補って余りある利益を生み出すだろう。
中国政府には、是非とも、対日割箸輸出の全面禁止措置を採用して欲しい。ただし、同時に日本の森林政策に関する誤った認識も訂正して欲しい。
あるから使う、安いから使い捨てできる。便利です。しかし、木材本来の利用法としては総合的に見てあまりほめられたもんじゃあないです。実際上、国産材に切り替えると言う発想は、実質的には割り箸使用禁止ぐらいの効果があらわれるんじゃないですかね。
今日も実は昼飯のとき使った割り箸はたった一度の食事でゴミ箱へすてました。
あすもたぶんそうすると思います。
あるから使うんですね。捨てるとき中国やシベリアの森林問題は頭の中にはないんですね。割り箸文化そのものを再考することは笑い話じゃあないとおもいます。
環境庁の大きな仕事ができましたねえ。
メディアに対抗できる影響力のある反論も困難なのがまた…。
私としては本文のご意見に全く賛成です。
日本の(高級品を除く)割り箸産業は壊滅的らしいですね。
江戸時代の割り箸は再生力が強い竹製だったらしいですが、循環可能な使い捨て文化みたいなものは日本の伝統ではないでしょうか。竹皮、経木、かわらけ、くらわんか碗…。
現状の人工林の荒廃を多少なりとも改善できるなら、中国の割り箸禁輸は大歓迎ですね♪
安いところにいく、という自然な流れが
しわ寄せになってしまい、再生可能な生産がかえって
高コストになる…
これはどうにも、世界自由貿易の重大な問題です。
技術が進歩し、際限のない需用がある現代では
国内で漁獲や森林伐採を完全自由化したら、
破局するのは目に見えています。まともな愛国心が
あるならそれはやらないでしょう。
でも国際でならやっていい、というのは…非常に
困った感覚です。
そういう環境規制(とついでに最低労働条件)は、
徹底した国際規制が必要なのかもしれません。
海は、地球は一つなのだから区切りようがない、
ということがなぜわからないのでしょうか…
ついでに、少し心配なのが、中国が高度成長している
ことで、せっかく対日輸出を禁じても中国国内で
割箸を使わないかが心配です。
せっかくですから竹や間伐材を用いればいいです。
中国には、間伐など丁寧に森を育てる技術は
ないものでしょうか?
事後になりましたが、報告もうしあげます。
私のブログのブックマークにoozora通信もリンクさせていただきます。よろしくお願いいたします。
ご無沙汰しています。堀@苫小牧です。遅くなりましたが、こちらの記事興味深く読ませていただきました。
「自由貿易システムの必然的帰結」まさに仰るとおりですね。WTO体制下における天然資源と食糧の安全保障に関しては、僕も関さんと同様の危惧を感じています。日本というミクロで見た場合も、世界レベルでも。
今、僕自身が森林資源を大量に消費する企業という立場に立つと、世界規模で見た森林資源の逼迫をひしひしと感じています。
今、アジアに森林資源を大量供給しているロシアもインドネシアも今のペースは10年もつかもたないか、もって15年。それが企業側の認識と思っていいと思います、オフレコですが。世界中のプランテーションが可能な土地で、とりわけ途上国で森林資源の囲い込みが始まっています。
企業としては資源調達コストが低いほうがいい。例えばFSC認証を受けていない木材は使わない方向になって来てはいますが、これもあくまで自主規制での話。余裕のあるところはできるけど、ライブドアのようにその隙間にビジネスチャンスを見出す存在は必ず出てきます。それゆえ、de jureな国際的なスタンダードが必要なのでしょう。
そういう観点から言うと、関さんが議論されているような日本の森林管理問題は、長期的には外材の価格高騰という外的要因によって解決へと向かっていくのではないでしょうか?
僕としては、そういった中でどれだけ収奪されつつある既存の天然林への負担を減らすことができるのか。そして、ビジネスとしていかに途上国に還元できるようなモデルをつくっていけるのか。そんなことを考えていきたいと、そんな新人生活です。
これからも関さんのブログを楽しみにしていますので、よろしくお願いします。
>オフレコですが。世界中のプランテーションが可能
>な土地で、とりわけ途上国で森林資源の囲い込みが
>始まっています。
どうか従来のような「囲い込み型」ではない、既存の農村社会と共生可能な、原木の調達方法を考えていって欲しいと願いいます。
タイなんかでは、囲い込み型プランテーションから、農民的土地所有を前提にした契約買取型へと大きく変化してきました。インドネシアは相変わらず「囲い込み型」が幅をきかせて、住民を苦しめています。 中国に関しても、「囲い込み型」ではない、新しいタイプの原木生産方式を開発していって欲しいと願いいます。
ご活躍に期待しています。また連絡ください。