代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

真田丸 第8回「調略」感想

2016年02月28日 | 真田戦記 その深層
 コメディタッチの前回とは打って変わって、すごく哀しく、怖い回でした。いままで主人公のダークな側面を脚色して取り繕うという大河ドラマは多かったと思います。「真田丸」はそういう常識を完全に打ち破っています。主人公サイドがよりダークになるように、なるように史実を脚色するという・・・・。

 今回描かれたのは、天正壬午の乱における上杉VS北条の戦い。史実では、北条と通じていた春日信達に北条氏直が密書を送ったところ、その飛脚が上杉兵に見つかって密書が見つかり、春日は上杉に殺されて磔にされたのでした。春日を調略しようというのが真田昌幸という説もありますが定かではないようです。

 実際には、春日信達が北条と内通しようとしていたのを見破った上杉方の諜報網の冴えが光るエピソードです。これがなければ、本当に上杉は北条に押しつぶされていたかも知れません。それほど当時の上杉、徳川、北条の三大名の中では、北条の力が抜きん出て強かったのです。
 今回の「調略」では、真田信伊が春日を内通させた上で殺し、北条を撤退させる作戦ということに脚色してしまいました。史料的な事実関係とは矛盾はしていないので、史実を曲げてはいませんが、かなり思い切った脚色です。

 それにしても、信濃から北条を撤退させるという目的のためならば、武田時代のかっての同僚を生贄にすることも辞さないという、ダークこの上ない昌幸でした。そして主人公に、知らぬこととはいえ、そのダーク作戦に協力させるという・・・・。これまでの大河の常識を覆す設定です。
 
 前回もそうでした。前回は、昌幸が滝川一益をだまして岩櫃城と沼田城を取り返したという脚色がされていました。実際は、ふつうに史料を解釈すると、滝川一益が元の主に返却をするということで両城を昌幸に返しただけです。そういう史実とも矛盾しないようにつくってはいますが、史料の行間に昌幸の腹黒いエピソードををブチ込んできます。

 滝川一益にしても、上杉景勝にしても、とっても善良な人々で、その人たちを腹黒い主人公サイドが片端から罠にかけて騙していくという、驚きの大河ストーリー。地元の人間としては、ちょっと複雑・・・・。これから「上田の人間です」と言っただけで発言を信じてもらえなくなるかも知れないと、ちょっと心配(-_-;。
 
 春日信達は本当にかわいそうでした。ドラマでもかわいそうですし、史実でも本当にかわいそうです。春日信達の父親は、あの武田家きっての名将・高坂(春日)弾正昌信です。大河ドラマ「風林火山」では、主人公の山本勘助が自分の軍略を受け継いでくれる後継者として期待をかけていたのが高坂弾正でした。その息子があの哀れな末路をたどり、春日家は滅びてしまうのです。草場の陰で山本勘助も泣いていそう。「真田丸」の家康が情けない顔をしているのはそのせいなのか・・・・。

 脚本の三谷さん、今回の大河ドラマでは二代目の悲喜劇を描くと宣言していましたが、一話だけ登場のゲストキャラに二代目の悲劇のきわめつけの事例を描きこんだわけです。これからもそんな二代目が登場しそうですね。
 
 これから先も昌幸はますますダークに描かれることでしょう。
 たとえば、北条家滅亡のきっかけになった名胡桃城事件。あれなんか、確かに史料を額面通りに受け取る解釈はじつに疑わしく、実際には影に何かの謀略が潜んでいそうな事件です。「真田太平記」では、名胡桃城事件は秀吉の謀略で、真田昌幸は罠を仕掛けられた被害者側として描いていました。「真田丸」では逆に昌幸が仕掛けた謀略であったとか描かれそうですね。果たしてどんな腹黒い事件として描かれることでしょうか? 他にも、いろいろな謀略がさく裂しそうですね。石田三成の忍城攻めが失敗するように仕組んだのは昌幸とか・・・。

 もう開き直った。どんどんやってください(笑)。面白くなればそれでいいです。



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