代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

財政的裏付けがなければ計画は画餅である 整備計画への反論その1

2013年06月02日 | 利根川・江戸川有識者会議
 利根川・江戸川河川整備計画の策定に関して、国土交通省・関東地方整備局は、有識者会議とパブリックコメントと公聴会を盛大に行いながら、結局のところ、ほぼ原案通りの内容で強引に押し通してしまった。
 大熊孝委員と私は、原案から修正案が出た段階でさらに有識者会議を開き内容をさらに詰めるべきであると要請していたが無視された。そしてマスコミ報道されているように、ダムの本体工事着工という事態になった。

 公聴会でもパブコメでも有識者会議でも、河川整備計画の根本的な部分で国交省の誤りを指摘する声が相次いだが、国交省は「「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」について学識経験を有する者、関係住民、関係県等からいただいたご意見に対する関東地方整備局の考え方」という文書を作成しそれらに反論している。国交省は反論したつもりらしいが、遺憾ながら、その多くはおよそ反論になっていない内容である。このまま「決着」とされてはたまらないので、国交省の反論に、再反論させていただく。一度に書ききれないので、何回かに分ける。
 国交省の反論は下記サイトにある。国交省反論の原文はすべて上記サイトからのものである。

http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000077995.pdf
 
 
論点番号 26 
複数の目標流量ごとに整備メニューを示すべき

 有識者会議の場で、大熊委員と私は「利根川の治水目標流量を17,000㎥/秒とするとそもそも費用が膨大になりすぎ、財政的な実行可能性がともなわない。目標流量を15000㎥/秒とした場合の整備メニューと予算も示し、17000㎥/秒とした場合のメニューと併記すべきだ」といった要請をしていた。(ちなみに、70~80年に一度確率の洪水流量が17,000㎥/秒であるという国交省の計算はそもそも間違っている)。
 その論点に対する関東地整の回答は以下の通りであった。


設定された目標流量17,000m3/s以外の整備メニュー等をお示しし、ご意見を伺うことは考えていません

 はたしてこれが私たちの要請に対する反論といえるのであろうか? 全く反論になっていないし、そもそも会話が成立していない。なぜ「考えられない」のか、説明責任は全く放棄されている。

論点番号 120  
必要な事業費と実現性の見通しを示すべき

 上記と関連して、「原案の実施に必要な事業費と、実現性についての見通しを示すべき」という要請に対する、関東地整の回答は以下のようなものであった。

河川整備計画は、河川工事の目的・種類・施行の場所等を定めるもので、事業費を定める計画ではないと考えています

 事業費の実現可能性を抜きにして、およそ実現不可能な法外な額の河川工事の計画を定められて、それを根拠に納税者にたかられてはたまったものではない。事業費を勘案しない計画などあり得るのだろうか? 国交省が、本当に、それでよいと考えているとしたら河川管理者失格であろう。 


 第9回の利根川・江戸川有識者会議の場で、国交省の関東地整の荒川河川計画課長は以下のように説明した。

河川整備計画原案の治水対策の具体的なメニューとして、現時点で想定している費用は約8,600億円でございます。」

 ところが、河川整備計画の財政規模の見積もり額を当初「8,600億円」と述べながら、第11回会議の議論の中で、本当に8600億円でできるのかと問われると、「8,600億円の中にはスーパー堤防の費用が含まれていない」と回答。第9回での説明は虚偽であったことが明確になった。

 「スーパー堤防」は1m当たりの整備予算が5000万円程度かかるという法外な事業である。国交省は河川整備計画の中で、江戸川の河口付近の22kmにわたってそれを整備しようとしている。スーパー堤防の整備のみで軽く1兆円を超える。

 スーパー堤防をメニューに加えるだけで、事業規模はすぐに8,600億円の2倍超になってしまい、日本の財政状況を考えて、およそ実現不可能なのだ。与えられた予算の中で、最大限整備区間の距離を長くしようと考えれば、当然、スーパー堤防は外され、より低コストで実行可能な既存堤防の強化工事が選択されるはずであろう。

 よって目標流量を1万5000㎥/秒程度にした場合の整備メニューを示し、そこで上がったメニューの方が喫緊なのだから、そちらから優先的に取り組むというのは必然的な選択である。ちなみに、目標流量を1万5000㎥/秒とすれば、八ッ場とスーパー堤防は真っ先に消えるメニューとなる。
 
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。