代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

TPPを積極的に推進しつつTPPを葬る方法

2013年06月11日 | Stop! TPP
 本日、参院議員会館で「ジャパン・アズ・ナンバーワン・バイヤー ~マレーシア・サラワク州の先住民族と日本木材市場の切れない関係」という企画に参加してきた。サラワクで伐採された違法伐採材の輸入をどう規制するかという、もう10年以上問題になり続けている話の最新情報であった。プログラムはFOEの下記サイト参照。

http://www.foejapan.org/forest/doc/evt_130611.html

 冒頭のあいさつをしたのは小池百合子元環境大臣。元環境大臣やら元国交大臣やら、与野党の議員も複数参加していたので、これ見よがしに、「マレーシアも日本もTPPになど参加したら、サラワクの熱帯林はますます破壊されるのではないか」と質問してみた。ただ、マレーシア国民はTPPのことなどほとんど知らされていないようで、TPPが自国の森林資源に与える影響については議論はされていないようだった。

 マレーシア在住の友人からの情報では、マレーシアではTPPのことなどほとんど報道されておらず、国民は全く知らされていないとのこと。最近になって、NGOの「ペナン消費者協会」が、「TPPで医薬品の一部は80%値上がりし、米国の製薬会社の特許で保護された薬は場合によっては10倍値上がりするものもある」と報告(some medicine prices would go up by 80 per cent, with the patented imported ones to increase by more than ten-fold if the negotiation was to be finalised)。その上で、「TPP交渉から離脱すべき」と表明。それが日刊紙の「ニュー・ストレーツ・タイムズ」で報道されたとのこと(2013年5月31日付記事)。同紙の下記サイト参照。マレーシア国民が情報を正しく知るだけで、反対世論に火がつく可能性はあるだろう。

http://www.nst.com.my/nation/general/call-to-stop-trans-pacific-talks-1.290147 

 NGO関係者から聞いた話では、アメリカのNGOの中には「輸入木材の合法性の証明に関しては、アメリカの基準の方が日本の基準より厳しいので、TPPでアメリカの基準が日本に適用されれば、違法伐採材対策にとっては好ましいのではないか」という主張をする人がいるという。
 
 日本政府が違法伐採材の規制に十分に取り組んでこなかったから、こんなことまで言われてしまうわけだ。情けない話だ。
 ならば・・・・そのように言うアメリカのNGOの方には、こちらも次のように言い返したい。

「では、TPPで加盟国の環境保全をより推進するようにしましょう。環境基準に関しては、より高いスタンダードを持っている国の基準を加盟国に適用するということです。木材貿易に関しては、日本はアメリカの優れた基準を取り入れます。遺伝子組換食品の表示義務に関しては、アメリカに日本の基準を適用してもらいます。アメリカの消費者はさぞ喜ぶでしょう」

 TPPでこれを持ち出したら、モンサントなど真っ青だろう。
 
 これは日本政府への献策である。日本政府は、日本よりアメリカの環境基準が高い場合はそれを受け入れ、日本の基準の方がアメリカより高い場合はアメリカがそれを受け入れるという、バーター取引を迫るべきなのである。TPP推進の名のもとに。

 TPPを推進しながら、より高い環境基準の相互受け入れという条件を迫れば、「そんなめんどくさいことになるならいち抜けたっ」と、モンサントなどTPP反対に回るだろう。米国の自動車業界もより強くTPPに反対するだろう。そうなれば交渉は瓦解する。「よりよいTPP」の積極推進は、TPP交渉自体を葬ることにつながる。推進が否定に帰結する弁証法力学だ。



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